2019 Fiscal Year Research-status Report
組織リモデリング増悪化分子としての内因性AGEの病態生理と根治的制御法の創成
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18K06807
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Research Institution | Shujitsu University |
Principal Investigator |
森 秀治 就実大学, 薬学部, 教授 (50220009)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
豊村 隆男 就実大学, 薬学部, 講師 (40425137)
渡邊 政博 就実大学, 薬学部, 講師 (10758246)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 炎症 / 組織リモデリング |
Outline of Annual Research Achievements |
生活習慣病に代表される組織リモデリング病態の増悪化にDampsと称される一連の起炎性分子群が大きな役割を果たすことが明らかにされている。これら起炎性分子の代表としてHMGB1が知られ,パターン認識受容体を過剰に刺激することで様々な炎症応答を惹起し,病態形成に関与することが示唆されている。組織リモデリングは慢性炎症に起因する疾患病態であり,本邦でも高い医療負担を招いているにもかかわらず,発症や増悪化の詳細な分子メカニズムは不明な点が多く残されており,病態に対する根治的な治療法は未だ確立されていない。特に,組織リモデリング病態が進行している炎症病巣におけるDamp分子の存在様式については,全く明らかになっていないのが現状である。本研究では,Damps分子としてHMGB1と同様の受容体刺激活性を示すAGEs分子を取り上げ,AGEsに対する様々な評価系を構築することによって,AGEs結合因子や機能複合体形成の存在解明,病態生理学的意義の解析を行い,新たな創薬シーズとしての可能性を検討した。具体的には,AGEsを特異リガンドに持った親和性担体(AGEs化担体)を調製し,これを用いてAGEsに高親和性を示すAGEs結合因子の探索研究を行った。即ち,AGEs化担体と組織抽出液を反応させ,非結合画分を除いた後に高塩濃度溶媒によって段階的溶出を行った。 その後,溶出画分を泳動分離し,個々の資料を質量分析にて分析した。その結果,数種類のAGEs結合因子が存在することが明らかとなり,AGEsとの結合特異性は個別に開発した試験管内結合評価系によって証明された。加えて,組換え型AGEs結合因子を用いた解析によって,AGEs結合因子がAGEs誘導性の炎症応答に影響を与えることも見出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
AGEsを特異的リガンドとした親和性担体を作製し,AGEsに対して高い親和性を示すAGEs結合因子の探索研究を行った。その結果,数種類のAGEs結合因子を同定することができた。加えて,AGEsとの特異的結合性を試験管内結合評価系を用いて証明することができた。更に,AGEs結合因子の組換え体(エンドトキシンフリー)を調製し,これらを用いた解析の結果,AGEs結合因子がAGEs誘導性炎症応答に影響することを見出した。本知見は,AGEs-AGEs結合因子間での機能複合体形成に伴う活性制御の可能性を意味しており,サイトカインストームに代表される過剰な炎症応答に対する新規の創薬標的としての応用性を示唆するものと考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,見出したAGEs結合因子による複合体形成の意義をより明らかにしていくために,培養免疫細胞を用いた生理機能の詳細検討や炎症病態モデルを用いた解析を進めていく予定である。具体的には,炎症性サイトカインの遺伝子発現応答や産生量変化,活性酸素の産生変化,NF-κB等の転写因子応答などを解析して行く予定であり,これらを詳細に解析することによってAGEs-AGEs結合因子による複合体形成が持つ病態生理学的意義を明確にしていく予定である。
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Causes of Carryover |
(理由)試験管内結合評価系を用いた結合特異性解析の際に,必要と考えていた細かな条件検討を比較的短期間で完了させることができ,当初の計画よりも円滑に実施できたこと,加えて必要試薬のキャンペーンも重なり,これらによって次年度使用額が生じることとなった。 (使用計画)次年度の研究費と合わせて、主たる研究課題であるAGEs結合因子の機能複合体としての病態生理学的意義の解明と創薬標的としての応用に向けて,試薬や抗体類の購入を充実させ,より積極的に研究活動を遂行していく予定である。
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