2019 Fiscal Year Research-status Report
成長円錐における局所的蛋白合成と細胞骨格の動態との関係解析
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18K06818
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
星 治 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (10303124)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武井 延之 新潟大学, 脳研究所, 准教授 (70221372)
長 雄一郎 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (90334432) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 成長円錐 / 局所的蛋白合成 / 細胞骨格 |
Outline of Annual Research Achievements |
神経細胞においては、細胞体から離れた部位において刺激に対する構造・機能変化が必要であり、そこでは局所的蛋白合成が重要なはたらきをしている。なかでも発達期の成長円錐ではその運動方向性に関与することが示唆されている。局所翻訳される蛋白質として、Rhoなどの細胞骨格制御因子のほかミトコンドリア機能の調節因子などが報告されている。しかし、翻訳装置(リボソームおよび翻訳因子群)によって、局所的な蛋白質合成が起こっている部位と細胞骨格成分がどのように相互作用しているかについては不明であり、その相互作用の解明は、成長円錐の転向運動のメカニズムを理解するうえで重要である。 本研究では、成長円錐における局所的蛋白質合成と細胞骨格との相互関係を形態学的に明らかにすることを目的に、2019年度は細胞膜剥離フリーズエッチングレプリカ法を用いて、成長円錐部分のイメージング方法の検討を行った。 その結果、成長円錐部分には、2つのタイプのアクチン線維が存在していることが確認することができた。この観察方法を基盤にして、局所的蛋白質合成に関係するリボソーム蛋白質や翻訳装置などを標識することで、蛋白合成部位と細胞骨格との相互関係を今後明らかにしうる可能性が示唆された。さらに、成長円錐のC-domainに多数のクラスリンコートが存在していることも確認できたが、クラスリンはエンドサイトーシスに関与する分子群として中核的な役割を担うことが想定されており、この点も解明できる方法であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ラット脊髄後根神経細胞を培養し、成長円錐部分を超音波により細胞膜を剥離した標本を作製した。その後、標本をフリーズエッチングレプリカ装置の試料台に載せ、急速凍結し、エッチング(表面の凍結乾燥)処理を施した。その後、白金とカーボンの蒸着をし、蒸着膜(レプリカ)を遊離させ、支持膜を張ったグリッドでレプリカを回収し観察試料とした。透過型電子顕微鏡により、成長円錐を観察したところ、以下の2点の所見が得られた。 ひとつは、多数のクラスリンコートが成長円錐のC-domainに存在していたことである。成長円錐ではエンドサイトーシスが盛んであるという報告があるが、その生理的意義はまだ十分に解明されていない。エンドサイトーシスに関与する分子群としてクラスリンが中核的な役割を担うことが想定されており、本観察方法がその役割のさらなる解明の一助になる可能性が示された。 2点目は、2つのタイプのアクチン線維が確認できたことである。ひとつはC-domainの細胞膜直下部分と思われる部位に、cortical actinとして、さまざまな方向に1本1本の線維が独立して走行しているものがみられた。他方で、糸状突起に向かって多数のアクチン線維が集束していくタイプのものが認められた。これら2つのタイプのアクチン線維は、前者は安定性が高く、後者は動的であると考えられるが、成長円錐部分のアクチン線維の存在様式の違いを電子顕微鏡で示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は細胞膜剥離フリーズエッチングレプリカ法(unroofing freeze-etching replica)により、成長円錐部分のアクチン線維の詳細の観察に成功した。この結果を基に、2020年度は、アクチン線維とともに、局所的蛋白質合成に関係するリボソーム蛋白質や翻訳装置などを標識して観察する方法を検討し、細胞骨格と蛋白合成部位との相互関係を明らかにして行く予定である。
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