2019 Fiscal Year Research-status Report
新規遺伝子Hoatzinを介した運動繊毛形成機構の解析
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18K06824
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
成田 啓之 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (50452131)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 繊毛 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者は2019年度に以下の研究成果を得た。 1.新規繊毛関連分子HOATZと相互作用する候補分子として見出したENO4について、より詳細な解析を行った。ENO4は精巣特異的エノラーゼと考えられていたが、脳室上衣細胞でも発現していることをRT-PCRおよびウェスタンブロットで確認した。ENO4タンパク質の発現レベルを野生型マウスとHoatz変異マウスの組織で比較すると後者で上昇しており、HOATZがENO4のプロセシングに関与している可能性が考えられた。HOATZとENO4の直接的な相互作用は確認できず、両者は未知の分子を介して間接的に相互作用していると考えられた。 2.Hoatz変異マウスに見られた種々の異常を定量的に解析した。具体的には、雄に見られた造精機能障害に関しては完成精子の欠落した精細管の定量および異常が出現する精細管サイクルの解析を、雌に見られた分娩中の異常死に関してはその頻度の解析をそれぞれ行った。またHoatz変異マウスで異常を認めなかった気管繊毛に関しても、軸糸構造が正常であることを透過型電子顕微鏡画像の定量的解析により確認した。 3.Hoatz変異マウス由来の上衣細胞にHOATZ-FLAG を導入することで繊毛打頻度低下の表現型が回復することを確認した。このときHOATZ-FLAGは運動繊毛内部に局在していた。 4.マウスの脳室上衣細胞および気管上皮細胞が持つ運動繊毛を透過型電子顕微鏡で観察し、特異な形態を持つ繊毛が稀に存在することに注目してその出現頻度を解析した。脳室上衣細胞では2、3本の9+2型繊毛が密着し束になったものが数%の頻度で観察された。同様の束は気管では見られなかった。一方、複数の軸糸が共通の細胞膜に包まれたものは、上述の束よりも頻度はさらに下がるものの、上衣細胞と気管繊毛上皮の両方で観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題に関する研究成果を1報学術誌に発表した。現在もう1報を投稿準備中である。 上述の論文を発表するまでに追加の実験や解析を幾つか要求され、これらを優先したため、HOATZと相互作用する分子の解析は昨年度初頭に計画したほどは進まなかった。しかし他のデータをまとめて論文を発表できたのはそれを補って余りある大きな進捗と考える。 透過型電子顕微鏡で稀に観察される特異な構造に注目してデータを積み重ねることにより、多繊毛の形成に際しこれまで考えられていなかった繊毛形成機構の存在が浮かび上がってきた。これもまた論文としてまとめる目処が立っている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までに得た結果をさらに発展させるために以下の解析を行う。 HOATZ タンパク質の構造解析を目指して、この目的に適した精製HOATZを大量に調製するための大腸菌発現プラスミドを選抜し、タンパク質の結晶作成と構造解析を目指す。 Hoatzゲノム領域を含むBACクローンに遺伝子組み換え操作を行い、天然のHoatzプロモーターによる調節のもとでHOATZ-FLAGを発現する組換えクローンを作出する。そして得られたクローンをマウス受精卵に導入し、ノックインマウスを作出する。これを用いてHOATZの細胞内局在と、HOATZと直接的に相互作用する分子に関する決定的な知見を得ることを目指す。 ENO4の機能、プロセシングおよび細胞内局在に関しても不明な点が多いので、これらを解析することでHOATZの機能を検討する。 電子顕微鏡観察を元に推測された新たな多繊毛形成機構に関し、これを幾つかのステップに分解して考え、各ステップにおける重要と想定される分子を絞り込む。それらを標的とする阻害剤やshRNAを用いて培養細胞の多繊毛形成に影響が見られるかどうかを検討する。
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Causes of Carryover |
論文の掲載が年度末になり、その掲載料(オープンアクセス)の支払いおよび立替払い請求が年度をまたぐこととなったので。
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