2018 Fiscal Year Research-status Report
神経欠損による運動ニューロン細胞死の定量解析と再生促進要因の解明
Project/Area Number |
18K06825
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
福島 菜奈恵 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (90334888)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 神経細胞死 / 神経欠損 |
Outline of Annual Research Achievements |
事故や災害によって末梢神経が損傷される場合、神経挫滅や切断よりも重度の傷害である神経欠損が生じることは少なくない。しかし、これまでの神経損傷および神経再生に関する研究は、圧迫損傷や切断に関するものが多く、神経欠損について、また、その程度(欠損の長さ)について考慮した研究はほとんどない。そこで本研究では、ラットの舌下神経を対象とした神経切除実験を行うことによって、軸索損傷後のニューロンの細胞死や、舌内での再生線維(舌下神経は舌筋を支配する運動神経である)について調べることを目的としている。平成30年度は、切除された舌下神経の長さ(切除幅)の違いが、神経切除後に軸索を損傷されたニューロンに生じる細胞死に対してどのような影響を与えるかを調べる実験を行った。実験ではまず、麻酔下で様々な程度(幅)にラットの片側舌下神経の切除を行った。舌下神経切除から12週後に、舌下神経核を含む脳幹部を採取し、採取した脳幹部から連続凍結切片を作成した。一定間隔の切片において、舌下神経核ニューロンを可視化するためにニッスル染色を施した。舌下神経損傷側と非損傷側の両側において、舌下神経核内に存在する運動ニューロンの数をステレオロジーの手法で計測し、舌下神経核ニューロンの生存率(切除側の舌下神経核ニューロン数/非切除側の舌下神経核ニューロン数(%))を算出した。その結果、神経欠損の長さ(切除幅)とニューロンの生存率(%)には負の相関関係があることが明らかとなり、神経欠損の長さが長い(切除幅が大きい)ほどニューロンの生存率が低い、つまり、神経の欠損部が大きいほど、よりニューロンの細胞死が起こりやすいということが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ラットを用いた舌下神経の切除幅を変えた神経切除実験によって、神経の切除幅(長さ)と損傷された軸索を持つニューロンの細胞死(生存率)の関係を明らかにすることができた。次の実験もすでに開始しており、研究は予定通り進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究から、ラットの舌下神経切除後に生じる舌下神経核ニューロンの細胞死に関して、神経欠損の長さと軸索を損傷されたニューロンの生存率には負の相関関係があることが明らかとなった。今後も、舌下神経を対象とした同様のラットを用いた神経切除実験を継続していく予定であり、神経欠損後のニューロンの細胞死の経時的変化を調べる実験、神経欠損の程度と舌内における軸索再生との関係について調べる実験、再生軸索を舌内に伸長させたニューロンを同定する実験等を行う予定である。
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