2020 Fiscal Year Research-status Report
Direct reprogramming of somatic cells by epithelial-mesenchymal transition
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18K06826
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
本橋 力 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 講師 (40334932)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ダイレクトリプログラミング / 上皮-間葉系転換 / EMT / 間葉系細胞 / 乳腺上皮細胞 / 色素細胞 / 神経堤細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はマスター遺伝子の発現とEMT発生を組み合わせたダイレクトリプログラミング法の検討を行っている。令和2年度は以下の2つの研究を行った。 研究1 EMT現象を用いた直接転換法の解析:マウス乳腺上皮細胞の神経堤細胞への直接転換を試みた。乳腺上皮細胞にEMT関連転写因子を発現させてEMTを起こした後、神経堤細胞発生のマスター転写因子SOX10を発現させるとP75陽性細胞が発生し、このP75陽性細胞を神経堤細胞分化条件で培養すると神経細胞やグリア細胞に分化することが観察された。これは乳腺上皮細胞がEMT発生とSOX10によって神経堤細胞へ直接転換したことを示している。また、EMT発生と直接転換の条件検討を行ったところ、EMTが発生してから48-72時間後にSOX10を発現させても神経堤様細胞に転換できることがわかり、効率的な直接転換につながる可能性が見いだされた。一方、乳腺上皮細胞と角化細胞の色素細胞への直接転換も試みた。レトロウィルスの感染法や培養条件、色素細胞発生のマスター転写因子の検討を行ったが、色素細胞に転換した兆候は示されなかった。 研究2 EMT現象を促進する転写因子の新しい組み合わせの探索:EMTを促進する新しい転写因子の探索や組み合わせの検討を昨年に引き続き行った。EMT現象の発生の有無とその強弱の評価に際し、定量的PCRを用いた評価方法では実験ごとの変動が大きく時間もかかるため、新たにフローサイトメーターを用いた評価方法を開発した。この方法により、乳腺上皮細胞でEMTが起こるタイミングや、EMTを促進する転写因子を明らかにした。次年度では、この結果を乳腺上皮細胞の効率的な直接転換へ応用する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染防止措置のための緊急事態宣言により、令和2年4月~6月に大学が全館閉鎖となり、最小限の研究活動しかできなくなった。このため研究で使用していた細胞株や研究用マウスを最低限まで減らしたため、この期間中は研究を進捗できなかった。さらに研究再開後にも、該当する細胞株や研究用マウスを研究使用に耐えうる状態にするのにも時間がかかり、当初の研究計画より大幅な遅れが生じてしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
マウス乳腺上皮細胞を直接転換してできた神経堤細胞は、生体由来の神経堤細胞に比べて分化能力が著しく劣っていた。これは他種の細胞への直接転換を行う際にも重大な懸念となることから、この原因の究明を行う。原因と推測される要因(直接転換の際のEMTの強弱、遺伝子の発現方法やパターンなど)を検討し、より生体に近い細胞への直接転換をめざす。一方、色素細胞への転換では、いままでに明らかにしたEMT関連転写因子を用い、これらとマスター転写因子の発現タイミングや培養条件等の検討を引き続き行う。令和2年度に明らかにしたEMT発生のタイミングや促進因子を利用した効率的な直接転換の検討も行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染防止措置のための緊急事態宣言により研究が計画どおりに進まなかったため、研究を令和3年度まで延長し、研究執行のために前年度経費を本年度に繰越す必要が生じた。研究計画は前年度の遅れを踏まえたものとなっている。経費は以下に示す項目に充てる予定である。 フローサイトメーター解析のための各種蛍光抗体、定量的遺伝子発現解析試薬、遺伝子発現制御システム、遺伝子導入関連物品(遺伝子導入試薬、電気的遺伝子導入機器、レトロウィルス発現関連試薬)購入、各種細胞培養のために必要な培養関連試薬・培地、実験動物飼育費用。
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