2018 Fiscal Year Research-status Report
体細胞初期化におけるTET1とp53の協調作用メカニズムの解明
Project/Area Number |
18K06833
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
徳澤 佳美 愛媛大学, 医学系研究科, 研究員 (20406531)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 初期化 / p53 / TET1 / ヒトiPS細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在ヒトiPS細胞が抱える問題点として、分化多能性の不安定さに加え、初期化の過程で遺伝子異常が生じてしまうことがあげられる。我々の研究室では、分化誘導効率が低下しても遺伝子異常が生じず、且つ安定した分化多能性を持つヒトiPS細胞を作製する方法を模索していた。その過程において、DNA脱メチル化反応を媒介するTET1遺伝子を初期化因子と共導入することで、分化多能性のみな らず、初期化の効率も向上することを見出していた。そこで申請者らは、TET1を導入して初期化の効率を向上させた状態であれば、p53活性による初期化の抑制が起こっても、分化多能性が高く、遺伝子異常の少ないヒトiPS細胞株が効率よく取得できるのではないかと考えた。実際、p53を抑制せずに、TET1共導入ヒトiPS細胞を誘導したとき、形態の良好なコロニーが多く得られた。本研究の目的はこの現象を分子レベルで解明し、さらに分化多能性との関係を明らかにすることである。 初年度は、TET1導入ヒトiPS細胞と非導入ヒトiPS細胞を明確に分けて、p53の関係を明らかにするために、エピソーマルベクターにGFP蛍光レポーター及び、RFP蛍光レポーターをそれぞれ挿入した。しかし、FACSでの分離が困難であったため、現在ベクター構築から見直している。 また、霊長類の初期胚の解析から、中内胚葉細胞のマーカーとされていた遺伝子が初期羊膜上皮細胞でも発現していることが報告された。そこで次年度で計画していた分化能評価を中内胚葉から内胚葉へ変更した。そのため、我々の研究室で樹立したヒトiPS細胞を用いて、高効率な内胚葉分化誘導条件の検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初はp53を抑制せずに樹立したTET1共導入ヒトiPS細胞の評価を中内胚葉や外胚葉への分化能で実施する予定であった。しかし、中内胚葉のマーカー遺伝子が初期羊膜上皮細胞でも発現しており、両者の識別が困難なことから、内胚葉への分化誘導に変更した。そのため、まずは我々が樹立したヒトiPS細胞を用いて高効率な内胚葉誘導プロトコールの確立を優先して進めることにした。また、TET1やp53導入を判別するために、GFP蛍光レポーターとRFP蛍光レポーターをそれぞれ挿入したエピソーマルベクターを用いる計画であったが、FACSでの分離が難しかったため、別の蛍光レポーターを挿入することにした。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度は、TET1導入ヒトiPS細胞と非導入ヒトiPS細胞を明確に分けて、p53の関係を明らかにするために、エピソーマルベクターに新たに別の蛍光レポーターを挿入してTET1導入(p53抑制あり/なし)、TET1非導入(p53抑制あり/なし)の皮膚線維芽細胞を分取して、ヒトiPS細胞の樹立を試みる。p53抑制の有無がiPS細胞誘導効率にどのように影響するのかをコロニーの形態や数で検討したい。樹立されたヒトiPS細胞の品質について、上皮化マーカーの発現や神経外胚葉、内胚葉への分化能で比較検討したいと考えている。また、γH2抗体の免疫染色も実施し、二本鎖切断の量を解析する。
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Causes of Carryover |
(理由) 次年度使用額として1,258,924円を繰り越したが、これは実験計画に遅れが生じたため、ヒトiPS細胞の作製や評価に使用する試薬、培地、実験器具等の購入を控えたためである。 (使用計画) 次年度繰越分は、分子生物学実験、細胞培養、免疫染色等に使用する試薬、実験器具の購入に当てる予定である。
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Research Products
(2 results)