2019 Fiscal Year Research-status Report
ピロリドン固定解剖体の特性の解明と解剖学研究・教育・研修への応用法の構築
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18K06841
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
松村 譲兒 杏林大学, 医学部, 特任教授 (90173880)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長瀬 美樹 杏林大学, 医学部, 教授 (60302733)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 臨床解剖学 / サージカルトレーニング / ピロリドン / ホルマリン / 遺体 / 固定法 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨今、献体遺体を用いたサージカルトレーニングのニーズが高まり、組織が固くならない固定法の開発が望まれている。本研究では、ピロリドン固定解剖体の特性や固定の至適条件を明らかにし、解剖学研究・教育・研修への応用のストラテジーを確立することを目的とする。 本年度は、ピロリドン固定遺体を用いて、消化器外科の腹腔鏡手術や脳神経外科の頭蓋底腫瘍に対する内視鏡的経鼻的アプローチ手術の手技修練に応用しうるか否かにつき検討した。 ピロリドン固定解剖体(体重換算で最終濃度10%)とホルマリン固定解剖体(5% ホルマリン液)使用した。臍部皮膚を切開し、トラカールを腹腔内に挿入し、CO2ガスを注入して気腹操作を行った。CO2ガス注入前後の腹部の外観は、ホルマリン固定では腹部はほとんど広がらず、ピロリドン固定では大きく広がった。注入CO2量、気腹前後の腹部前後径と腹囲の変化はピロリドン群で有意に大きく、ピロリドン固定ではホルマリン固定に比較し組織が柔らかく、十分な気腹が可能であることが示された。気腹完了後、腹腔鏡カメラを挿入すると、全方向に自由に移動でき、腹部臓器(肝臓・肝鎌状間膜・胃・小腸・横行結腸・S状結腸・膀胱・大網)を明瞭に観察できた。また、下腹部に鉗子挿入用トラカールを挿入し、把持鉗子にて周囲臓器を動かして胆嚢と直腸を同定できた。以上より、ピロリドン固定解剖体での腹腔鏡手術手技トレーニングは実現可能性が高いと考えられた。 内視鏡を用いた経鼻的アプローチによる頭蓋底手術では、ピロリドン固定遺体6例中4例において、鼻腔の軟部組織が生体と同様に柔らかく保たれ、実際の手術と同等の術野が得られた。2例においては組織が固く、手術操作が困難であった。一方、脳組織の操作には柔らかすぎる印象であった。脳神経外科における内視鏡を用いた経鼻的アプローチによる頭蓋底手術手技修練にも有用であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ピロリドン固定遺体を用いて臨床の様々な科(消化器外科、脳神経外科、耳鼻咽喉科、麻酔科、呼吸器外科)と共同研究を進め、その有用性を示す結果が順調に得られているため。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、ピロリドン固定解剖体の特性や固定の至適条件を明らかにし、解剖学研究・教育・研修への応用のストラテジーを確立することを目的とする。本年度は、下記のアプローチで目標達成を目指す。 目標①:ピロリドン固定法の特性の解明と至適条件の決定。a) 腹腔鏡手術や関節可動性評価には体重換算で10%のピロリドン固定法が有用であったが、抜脳操作や脳組織の手術手技トレーニングには固定が不十分であった。そのため、ピロリドンの濃度を変えたり、頭蓋に小孔をあけ、ホルマリン液をクモ膜下腔に注入したり、ピロリドン固定後の脳を摘出後ホルマリンに浸漬し、脳手術や脳解剖に適した条件を検討する。c) ご遺体のautopsy imaging(胸腹部CT, 脳MRI)を、固定前とホルマリン固定後ないしピロリドン固定後に行い、画像を比較解析する。d) 病原体不活化能、抗カビ効果を検討する。 目標②:ホルマリン固定法では剖出・観察が困難であった、骨盤内神経叢や心臓刺激伝導系の剖出、精査を行う。 目標③:ピロリドン固定解剖体を用いた医学教育法の構築。臨床基本手技のプロトコール作成(喉頭鏡、気管内挿管、気管カニューレ、動静脈穿刺、中心静脈カテーテル挿入、腰椎穿刺、骨髄穿刺、トロッカー挿入、結紮縫合など)。教育用標本作製:①臓器の3Dモデル(CT画像のSTLデータをもとにシェル分けして3Dプリンターで作製) ②透明化技術と動静脈からの色素注入、Sihler染色、whole mount免疫染色、骨軟骨染色など組み合わせる。 目標④:ピロリドン固定解剖体を用いた臨床手技修練ストラテジーの構築。腹腔鏡手術につき、ピロリドン固定とThiel固定の比較を行う。エコーガイド下神経ブロック、中心静脈カテーテル挿入、挿管などの手技修練に応用できるか検討する。
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Causes of Carryover |
1~2年目は、研究計画のうち、腹腔鏡手術手技や脳神経外科手術手技、耳鼻咽喉科手術手技など、既存の研究装置を用いて実施することができるものを中心に進め、消耗品費用を節約した。3年目は、感染症に対する効果の検証や、透明化、染色などを組み合わせた3次元標本の作製を予定しており、また、これまで準備を進めてきたautopsy imaging開始に伴う消耗品が見込まれ、繰り越した予算を使用する予定である。
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Research Products
(15 results)
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[Journal Article] Mineralocorticoid receptor blockade suppresses dietary salt-induced ACEI/ARB-resistant albuminuria in non-diabetic hypertension: a sub-analysis of evaluate study.2019
Author(s)
Nishimoto M, Ohtsu H, Marumo T, Kawarazaki W, Ayuzawa N, Ueda K, Hirohama D, Kawakami-Mori F, Shibata S, Nagase M, Isshiki M, Oba S, Shimosawa T, Fujita T.
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Journal Title
Hypertens Res.
Volume: 42
Pages: 514-521
DOI
Peer Reviewed
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