2020 Fiscal Year Research-status Report
The contribution of the neural crest cells in developing lateral line scale in the teleosts.
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18K06844
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
重谷 安代 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (70431773)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ポリプテルス / 神経堤細胞 / 色素細胞 / 側線鱗 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 実験発生学的な鱗形成への神経堤細胞の関与に関する検討 最初に、細切した絶縁フィルムをポリプテルス神経胚の神経堤外側へ外科的に挟み込み、神経堤細胞の移動経路を阻止する実験を行った。この微細手術を行う条件検討を行いつつ実験数を増やし、その比較的早い時期の効果を確かめるために、移動する神経堤細胞の分子マーカーを用いて確認している。 2. ポリプテルスSox10欠損体の作製とエナメル含有鱗形成への神経堤細胞の関与の検討 ポリプテルスにおいて黒色素細胞になる神経堤細胞は、背側経路を移動すると考えられることがPsSox10とその下流遺伝子であるPsMITFの発現パターンから示唆された。これは外側ストライプと呼ばれる黒色素芽細胞の一過性の分布が、側線感丘原基の形成位置と一致するものであり、共に水平中隔の外側端を表す。ただし、ゼブラフィッシュで知られているような腹側経路からの外側ストライプへの流入を否定するものではない。 3. 硬骨魚の鱗と感丘の再生過程における関係性の検討 ポリプテルス成魚の側線鱗とその近傍の通常鱗の異所性交換移植実験を行い、およそ3ヶ月後にこれらそれぞれの鱗を採取して連続切片を作製し形態学的解析を行った。通常鱗のあった場所へ側線鱗を移植した場合、側線鱗を覆う表皮上の感丘は細胞塊としてまだ退縮し切らずに観察された。一方、側線鱗のあった場所へ通常鱗を移植した場合には、通常鱗を覆う表皮上には明確な感丘構造や神経構造は見当たらず、また本来なら側線鱗の表層に存在するような小孔は、移植した通常鱗には新たに認められることはなかった。これは側線鱗および感丘の再生がポリプテルスにおいては不可能であること意味するのか、あるいは再生するのに3ヶ月間では足りないのかを判定するには実験数が圧倒的に足りないため、同実験を繰り返す必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
魚の一番の繁殖時期が新型コロナウイルスによる緊急事態宣言下となり都と大学機関から外出自粛要請され、新たな胚を用いた研究はほぼ出来ない状況であった。繁殖期から外れた時期に辛うじて採取できた胚は主として分子マーカーの発現パターンの確認に用いた。また講義の全ては急遽オンデマンドに変更されたことに加え、医学教育の前期の実習は全て後期に移行したことなどで、教育業務が超過密スケジュールとなり、辛うじて成魚の維持ができたという状態であった。そして実質上3月になってから研究を再開することになった。再び繁殖時期を迎えた現在も3度目の緊急事態宣言下にある。 従って、研究の要となる胚を用いた実験は殆ど進んでおらず、胚を用いない実験を細々と進めている状況であり、全体的な進捗状況は遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
繁殖時期にある魚の交配が困難な状況であるため、少ない回数でも出来るだけ効率良く産卵させるために、栄養価の高い餌を頻繁に利用できるように購入システムを整えている。依然胚の採取を1番のプライオリティと考え、飼育時間の掛かる実験から先に行うなど今後1年間の実験を計画的に進めるようにする。 1. 実験発生学的な鱗形成への神経堤細胞の関与に関する検討> 絶縁フィルムの微細手術を実験数を増やして行い、神経堤細胞の移動初期の分子マーカーで確認の上うまくいっていることが明らかとなれば、術後発生を先まで進めて鱗形成分子マーカーを用いての確認作業を行う。 2. ポリプテルスSox10欠損体の作製とエナメル含有鱗形成への神経堤細胞の関与の検討> 常時胚が採取出来るようになり次第、欠損体作製実験に取り掛かる。 3. 硬骨魚の鱗と感丘の再生過程における関係性の検討> 側線鱗の異所性交換移植実験の実験数を増やすべく実験を続ける。時間の掛かる実験なので出来るだけ早めに行う。
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Causes of Carryover |
この1年間強で東京都では新型コロナウイルス蔓延防止のため3度の緊急事態宣言が発出され、そのうち2度は実験動物の1番の繁殖期に当たったことにより、最も多く費用を当てていた生きた胚を用いた実験が殆ど進んでおらず、繁殖個体に対しては繁殖の助けになると思われる栄養価の高い餌を与えることでほぼ終わった。次年度も栄養価の高い餌を継続し、交配の回数が少なくとも効率良く産卵を促せるようにして、胚に実験発生学的手法並びに分子生物学的手法を施すために昨年度予定していた予算を当てる。またコロナ禍で予定していた学会に参加できず、辛うじてできたとしてもリモート参加になったことも予算が浮いた原因になっている。その余剰分はリモート環境を整えることにも使用したい。
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