2022 Fiscal Year Research-status Report
Cross-talk between lipid metabolism and calcium signaling in regulating insulin secretion in pancreatic beta cells
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18K06859
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
赤羽 悟美 東邦大学, 医学部, 教授 (00184185)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | カルシウムチャネル / β細胞 / インスリン / 脂質 / カルシウムシグナル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「膵臓β細胞における電位依存性Ca2+チャネルを介したCa2+シグナル制御機構が、Stard10との相互作用を介して脂質代謝のセンシング・調節機構と連携している」という作業仮説を検証することにより、脂質異常を背景とした膵β細胞インスリン分泌機能不全の新たなメカニズムを明らかにすることである。研究代表者らは、これまでにリン脂質転移蛋白(Stard10)が電位依存性L型Ca2+チャネルαサブユニット(CaV1.2)と相互作用し、Stard10が膵臓や肝臓などの組織に特異的に発現し、脂質代謝ならびに脂肪滴サイズの制御に関わることを見出してきた。最近、2型糖尿病のリスク遺伝子の解析からStard10が膵臓β細胞におけるインスリン分泌と細胞内Ca2+シグナル制御に関わることが報告されたが、そのメカニズムは現在のところ不明である。 そこで本研究において、膵臓β細胞におけるインスリン分泌―細胞内Ca2+シグナル―脂質代謝の連関機構を解析するべく、マウスβ細胞株(MIN6細胞)を用いて、インスリン分泌と細胞内局所のCa2+シグナルをリアルタイム・イメージングにより解析する実験系を構築し、画像データを定量的に解析するプロトコールを構築した。これらの系を用いて、脂質代謝と電位依存性L型Ca2+チャネルをはじめ細胞内Ca2+シグナル経路とインスリン分泌の連関の定量的な解析を進めた。また、細胞内Ca2+シグナルのキーステップを担う電位依存性L型Ca2+チャネルの細胞膜発現量のアッセイ系を構築し、現在、電位依存性L型Ca2+チャネルの細胞膜発現量の制御に関わる相互作用蛋白の影響を解析している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
膵臓β細胞におけるインスリン分泌―細胞内Ca2+シグナル―脂質代謝の連関機構を解析する目的で、これまでにマウスβ細胞株(MIN6細胞)を用いた実験系を構築した。インスリン分泌顆粒のダイナミクス、インスリン分泌、および細胞内局所のCa2+シグナルのリアルタイム・イメージングによる定量的解析を行う実験系を構築した。さらに、これらの画像データを定量的に解析するプロトコールを構築した。これらの解析プロトコールを用いてインスリン分泌顆粒の挙動を定量化し、その細胞内Ca2+シグナルとの連関についてグルコース等の分泌調節物質の影響を解析し、興味深い結果を得た。現在、脂質代謝関連物質の影響を解析中である。また、細胞内Ca2+シグナルのキーステップを担う電位依存性L型Ca2+チャネルの細胞膜発現量のアッセイ系を構築した。現在、このアッセイ系を用いて電位依存性L型Ca2+チャネルの細胞膜発現量の制御に関わる相互作用蛋白の影響および脂質代謝との連関機構の解析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでにMIN6細胞からのインスリン分泌顆粒およびダイナミクスとインスリン分泌、電位依存性L型Ca2+チャネルの細胞膜発現量、ならびに細胞Ca2+シグナルをリアルタイム・イメージングにより定量的に解析する実験系と解析プロトコールを確立した。これらの手法を用いて、インスリン分泌および電位依存性L型Ca2+チャネルの細胞膜発現量に対する脂肪酸代謝の影響について興味深い知見が得られつつある。さらにその分子機構を明らかにするために、電位依存性L型Ca2+チャネルの細胞膜発現量の制御に関わる相互作用蛋白の網羅的解析の結果を踏まえて、脂肪酸依存的な電位依存性L型Ca2+チャネルの細胞膜発現量の制御を担う相互作用蛋白の同定を進めている。今後、これらの結果を野生型マウスとStard10遺伝子欠損マウスに高脂肪食を負荷し、初代培養膵臓β細胞を用いて、上記の結果を検証する。また、以上の実験結果に基づき膵臓β細胞の電気活動・細胞内Ca2+シグナル・エネルギー代謝(脂肪酸β酸化を含む)、インスリン分泌を統合した数理モデルを構築しシミュレーション予測を可能にする。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス(Covid-19)感染拡大を受けて学会がオンライン開催になったため、学会出張旅費の支出が当初の予定額より少なかった。また、PCR関連試薬やプラスチック製品が供給不足になり納期が遅延したため、研究計画を一部変更した。物品購入の際にキャンペーンを利用するなど経費節減に努めた。上記の理由により、次年度使用額が生じた。期限延長した残額は、実験用消耗品費と論文投稿費用に充当する計画である。
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