2019 Fiscal Year Research-status Report
環境で攻撃性を司る神経回路はどの程度変化するか?:遺伝と環境の交点を探る
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18K06866
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
前川 文彦 国立研究開発法人国立環境研究所, 環境リスク・健康研究センター, 主任研究員 (40382866)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 攻撃性 / エストロゲン様作用 / 脳 |
Outline of Annual Research Achievements |
鳥類を材料として神経行動学・分子生物学的な手法を用いて攻撃行動に関わる分子基盤を遺伝・環境要因に着目して明らかにすることを試みた。さらに、攻撃性を変化させる代表的な環境要因として内分泌かく乱物質を取り上げ、内分泌かく乱物質曝露が環境要因に高い感受性を示す攻撃関連遺伝子発現にどのように影響するか、以下の3つのサブテーマを行うことを予定している。 (1) 攻撃関連遺伝子群の同定:攻撃性が異なる2系統を用いて視床下部の遺伝子発現を比較し、特にメソトシンの下流で働き攻撃行動発現に関わる遺伝子群に着目して詳細解析を行うことで、遺伝因子・環境因子双方に影響を受けやすい神経回路に関する仮説を構築する。 (2) 攻撃関連遺伝子発現の制御機構の解明:環境要因に高い感受性を示す攻撃性関連遺伝子発現を制御する因子を同定し、環境に影響を受け易い仕組みを探る。 (3) 環境因子による攻撃関連遺伝子発現変化の解明:エストロゲン様作用を持つ内分泌かく乱物質を曝露された鳥類の遺伝子発現・エピジェネティック変化を検討し、攻撃行動を司る分子基盤を形成する遺伝子のうち、環境に影響を受けやすい遺伝子群を確定する。
本年度は環境の影響を受けやすいと考えられる視床下部ー下垂体ー性腺軸を構成する神経内分泌経路 や視床下部ー下垂体ー副腎系を構成する神経内分泌経路に存在する遺伝子群に関して相関を検討した結果、いくつかの神経ペプチドの遺伝子に攻撃性の異なる2系統で異なる発現量を示すものを見出すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
哺乳類で性ホルモンが攻撃性に関わる遺伝子や蛋白質の発現量を調節している多数の報告は古くから存在するが(Vries et al., 1986; Homeida and Khalafalla, 1990; Okabe et al., 2013)、鳥類に関しては性ホルモンが誘導する神経ペプチドの遺伝子発現や蛋白質の発現量を調節しているか否かについての報告は比較的少ない。本研究の結果より、ウズラにおいてテストステロン値と神経ペプチドの遺伝子発現量に相関関係がある可能性が見いだ、攻撃性との因果関係がある可能性も見出せつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
攻撃性の異なる鳥類の視床下部から抽出したRNAサンプルを用いて系統間で異なる発現量を示す遺伝子を更に詳しく網羅的探索を解析する。その際、既に攻撃性との関連が指摘されている遺伝子(メソトシン, GnIH、ステロイド合成酵素)にも着目して、他の遺伝子発現との相関を検討すると共に機能的関連性についても精査する。また申請者が環境影響を受けやすいと仮定する「テストステロン→メソトシン経路」下流に存在する遺伝子群を探索するとともに、遺伝子個々の特徴を遺伝・環境の影響の受けやすさの観点からの群分けを行う。
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