2018 Fiscal Year Research-status Report
げっ歯類統合失調症モデルの行動課題に伴う黒質ドパミン神経活動
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18K06868
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
難波 寿明 新潟大学, 脳研究所, 助教 (90332650)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ドパミン / カリウムチャネル / 統合失調症モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
中脳ドパミン神経は、報酬を予測する条件付け刺激や嫌悪刺激などの外部刺激に対して活動応答することで、認知、学習などに寄与すると考えられている。またドパミン伝達の異常は、統合失調症の「ドパミン仮説」として唱えられているように、疾患の発症と関連するものと考えられている。上皮成長因子を新生仔期に投与したマウスは、統合失調症様の行動異常が出現し、疾患モデル動物となることが知られる。これまでの研究経過から、麻酔条件下のモデル動物ではドパミン神経の自発発火活動やチャネル特性に異常が見いだされている。すなわち、モデル動物の自発発火活動において、バースト活動の亢進が認められ、その異常にはカルシウム活性型カリウムチャネル機能の異常が関与する可能性が示唆されている。 本課題では、マウスにおいて慢性電極をもちいた覚醒記録を行うことで、これらの影響が行動課題遂行時や感覚刺激を提示した際にどのような影響をもたらすのかといった点について検討する。また、チャネル分子発現の定量やチャネル機能阻害が行動に及ぼす影響について行動薬理学的検討を行う計画である。計画初年度は、覚醒マウスのドパミン神経より活動記録をする実験手法確立のため、慢性ワイヤー埋め込み電極を用いて条件検討を行った。その結果、一定の効率で自発発火活動の計測が可能となってきたため、ホームケージや新規環境下での自発発火活動の計測を進めている。中脳ドパミン神経におけるチャネル分子発現の定量的検討として、カルシウム活性型カリウムチャネルや過分極活性型カチオンチャネルなどのプライマー条件を検討し、予備的に中脳組織全体を用いたサンプルからの定量を進めている。また、定量感度や精度を向上させるためドパミン神経特異的に緑色蛍光蛋白が発現する遺伝子改変マウスからのドパミン神経細胞のサンプル採取が可能な状態になってきている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
マウスを用いた覚醒記録に関しては、年度内を通して慢性電極の位置、電極数等に関してより効率よく計測が可能な条件の検討を要したが、それにより計測効率が向上してきているため、当初計画にある覚醒フレーム頭蓋固定記録による計測は実施することなく、計画が進行された。そのため、計測法の確立に関しておおむね順調に進行しているといえる。 研究期間を通して行動課題遂行下でモデル動物におけるドパミン活動を検討し、ドパミン活動異常が見いだされる可能性を検討する計画である。当該実施期間では、神経活動計測に適した行動評価系の検討がほとんどなされていないため、その点に関しては当初より計画の進行が遅れているといえる。また並行してチャネル機能異常が、統合失調症モデルの行動指標に対する影響を検討するため、チャネル機能阻害剤の脳内局所投与などの薬剤投与実験も進める必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
覚醒自由行動下におけるマウスからのドパミン記録の効率が向上してきているため、活動記録と行動アッセイ系との組み合わせを検討し、行動課題に伴うモデル動物のドパミン活動異常について検討する。基盤データとして新規環境下や感覚刺激(嫌悪刺激など)に対する活動応答を計測することで、刺激応答性などにモデル動物で異常が認められるかといった点についても検討しておく。また、行動課題や行動装置に合わせラットを用いた実験系も考慮する。 中脳ドパミン神経におけるチャネル分子発現の定量的検討に関しては、サンプルが採取できる状態になっているため、レーザーマイクロダイセクション法を用いたサンプリングを進め、標的チャネル分子の定量解析を実施する。特にモデル動物におけるチャネル機能異常は成熟期以降に認められ、青年期前には出現しない。従って、青年期前と成熟期でのチャネル分子発現を定量比較することで、統合失調症の青年期発症について考察する。
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Causes of Carryover |
当該年度は、覚醒自由行動下での神経活動計測を中心に、計測効率を向上させるための条件検討を行った。したがって覚醒頭蓋固定記録は実施されておらずマウス用のフレーム固定装置は購入されなかった。また行動装置も購入しておらず、次年度にはマウス用T迷路や3チャンバー社会性試験のための装置を購入する計画である。それ以外の次年度経費の使用計画としては、随時モデル動物を作成するため、妊娠マウスの購入とその飼育維持、ジェノタイピング用の酵素試薬などに経費を使用する。さらにチャネル分子発現定量のため、レーザーマイクロダイセクション用フォイル付きスライドガラス、cDNA調整や定量PCRのための酵素試薬、プライマー、プローブの購入に充てる。
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