Outline of Annual Research Achievements |
尿蛋白等のネフローゼ症を呈する腎疾患の一つ, 常染色体有性遺伝性巣状分節性糸球体硬化症(focal segmental glomerulosclerosis, FSGS)において受容体作動性Ca(カルシウム)チャネルをコードするTRPC6遺伝子の変異が報告されている。しかしTRPC6チャネル変異とFSGS発症メカニズムの関連には不明な点が多く,詳細な解析が求められている。本年度までにFSGSで確認されたTRPC6変異のうち,コイルド・コイルドメインに変異を認めるものについて,核磁気共鳴(NMR),蛍光エネルギー移動, 電気生理学等を用いた分子構造並びに機能的解析を実施した。K874X,Q889K,R895C,R895L,E897K何れの変異体において, コイルド・コイルドメインの会合状態の異常と,カルモジュリン(Calmodulin)を介したCa依存的不活性化(CDI)の遅延を認めた。また,腎糸球体上皮細胞(培養型ポドサイト)においてTRPC6のCDIを遅延させることで,アクチンストレスファイバーに形態異常を引き起こすことを確認した。以上の内容を米国腎臓学会誌にて報告した(Polat, Uno et al., 2019, JASN)。更に,他から報告されているアンキリンドメインに変異を認めるP112Q,M132T, TRPチャネル共通のTRPボックス近傍における変異体L780Pについて機能解析を行った。Patch-clamp法を用いて測定したところ,最大電流密度はP112Q,M132Tで野生型と比べ優位に上昇していたが,L780Pでは若干減少していた。一方,ピークからの不活性化過程はP112Q,M132T,L780P何れの変異体において,野生型に比べ優位に遅延していた。これらの結果はコイルド・コイルドメイン同様,アンキリンドメインやTRPボックスのFSGS変異体ではCDIの破綻が存在していること、一方でその破綻の度合いには違いがあることを示唆していた。次年度は引き続き変異体の詳細な解析を進め,FSGSにおけるTRPC6CDIの関与について詳細を明らかにし,FSGSの発症機構の解明に繋げる。
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