2018 Fiscal Year Research-status Report
細胞内膜の膜電位イメージング法の確立とその生理機能の解明
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18K06873
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大河内 善史 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (90435818)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 膜電位 / ファゴソーム / 貪食細胞 / カルシウム / アクチン重合 |
Outline of Annual Research Achievements |
貪食細胞は、病原菌や死細胞などの異物を細胞内に取り込み(貪食)、殺菌・消化する免疫細胞である。貪食過程では、細胞膜電位が変動することが知られている一方で、食胞膜の膜電位変化の可能性も指摘されてきた。しかしながら、食胞膜電位がどのように変化するのか未だ不明である。したがって、膜電位と食胞の機能連関が不明のままである。本研究では、食胞における食胞膜電位の役割を解明するために、生きた細胞における食胞膜電位を膜電位感受性蛍光タンパク質Merm2を用いて計測してきた。その結果、細胞膜電位と比較して、食胞膜電位は過分極側にシフトすることが分かった。食胞膜電位が過分極する意義を調べるために、貪食過程で誘導される細胞内カルシウムの上昇と膜電位の時間的な相関を調べた。食胞の形成過程は、Lifeact-mCherryを用いてアクチン形成過程を可視化して判断し、細胞内カルシウムの増減はGCaMP6を用いて可視化した。IgGでコートされたビーズをマクロファージ系の培養細胞RAW細胞に貪食させ、細胞内カルシウムの変動を観察した結果、食胞形成途中において顕著なカルシウムの増減が観察される一方で、食胞形成後には顕著な増減は見られなかった。一方で、食胞膜電位の変動は、食胞が形成された直後から5分以内で過分極側にシフトする食胞もあれば、10分以上かけてゆっくりとシフトする食胞など様々であり、GCaMP6で観察されたカルシウム変動とは明確な一致は見られなかった。食胞を取り囲むアクチン繊維は食胞形成後1~2分間後に消失しており、膜電位の変化にかかる時間よりも短かった。したがって、過分極にシフトする食胞膜電位変化がアクチン繊維の崩壊、カルシウム流入に積極的に関与する可能性は低いと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
膜電位変化を観察できる系が確立できたことに加えて、カルシウムの動態やアクチン重合の動態変化を観察して、膜電位変化との相関の有無を解析できたことは今後の研究の方向性を決めるうえで重要な結果であったため。
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Strategy for Future Research Activity |
蛍光イメージングによる膜電位変化の解析に加えて、電気生理学的手法を取り入れて、食胞膜電位の解析をより定量的に扱う必要がある。そのために、細胞から食胞を取り出して、食胞膜に電極をあて、電位変化を計測する技術を確立する。この技術を用いて、食胞膜電位の値を記録する。また、膜電位固定法により任意に膜電位を変化させた時の蛍光強度を測定し、電位と蛍光の標準線を作成する。この標準線から算出された数式を元に、蛍光イメージングから得られた食胞膜の蛍光強度から膜電位を求めて、食胞の膜電位変化をmVで表す。電気生理学的手法により取り出した食胞の膜電位を測定し、蛍光膜電位イメージングから得られた食胞膜電位の値と一致するか確認する。また、食胞膜電位の過分極シフトが細胞内カルシウムの流入に与える影響を引き続き調べる予定である。その理由は、膜電位とカルシウムは古くから相関が指摘されているためである。食胞形成後のカルシウム変動が観察できなかった理由に、カルシウム変動が小さい可能性、時間分解能が低いために観察できなかった可能性が否定できない。そのため、時間分解能を上げて、且つ、弱い蛍光変化の有無を観察する予定である。
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Causes of Carryover |
当初の予定通りに執行したが、結果として予定よりも多くの次年度使用額が生じてしまった。次年度も予定通り執行する予定であるが、計画的に予算の使用を進めていく。
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Research Products
(2 results)