2020 Fiscal Year Research-status Report
細胞内膜の膜電位イメージング法の確立とその生理機能の解明
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18K06873
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大河内 善史 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (90435818)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 膜電位 / ファゴソーム / イメージング / イオンチャネル |
Outline of Annual Research Achievements |
ファゴソーム膜電位の可視化を通して、ファゴソーム膜電位の生理的意義の解明を目指して研究を進めた。これまでの研究から、ファゴソーム膜電位がファゴソーム膜形成後に過分極することを明らかにしてきたが、詳細な解析の結果、まずファゴソーム形成直後に脱分極し、その後過分極することが分かった。 次に、この膜電位変化を誘導する分子実体を明らかにするために、ファゴソーム膜を単離し、質量分析装置を用いてファゴソーム膜に存在する分子を網羅的に同定した。その結果、数種類のクロライドチャネルと1種類のカリウムチャネル、1種類の非選択的陽イオンチャネルの同定に成功した。 次に、過分極応答に関与する分子を同定する目的で、これらのイオンチャネルを阻害する薬剤を用いて、ファゴソーム膜電位への影響の有無を検討した。クロライドチャネルを非選択的に阻害するNFA、同定したカリウムチャネルを選択的に阻害する薬剤では効果は得られなかった。これら2種類の薬剤を組み合わせても効果はなかった。 去年、カルシウム活性化型カリウムチャネル、BK(Slo1)チャネルがマクロファージのファゴソーム形成に関与することが報告された。この文献情報を元に、BKチャネルの阻害剤paxillineを用いて効果を検討した結果、paxilline単独では影響が見られなかったが、NFAとpaxilline両方を用いた場合に、ファゴソーム膜電位の脱分極が持続し、過分極応答が阻害される結果が得られた。すなわち、ファゴソーム膜電位を過分極させる分子として、BKチャネルと何らかのクロライドチャネルの関与が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
質量分析装置を用いた解析と薬理学的な実験により、ファゴソーム膜電位を制御する分子を見出せたこと。
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Strategy for Future Research Activity |
BKチャネルがファゴソーム膜電位に関与することが明らかになったため、今年度はBKチャネルを活性化するカルシウムの時空間変化を解析し、ファゴソーム膜電位の変化とカルシウムの変化との相関を明らかにし、ファゴソーム膜電位制御機構の一端を解明する。 一方で、BKチャネルとともにファゴソーム膜電位を制御するクロライドチャネルの分子実体を遺伝子ノックダウン、ゲノム編集法を用いて特定する。また、脱分極応答を制御する分子についても薬理学な実験を行い、ファゴソーム膜電位への関与を明らかにする。
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Causes of Carryover |
当初の予定通りに執行したが、結果として予定よりも多くの次年度使用額が生じてしまった。次年度も予定通り執行する予定であるが、計画的に予算の使用を進めていく。
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Research Products
(5 results)