2019 Fiscal Year Research-status Report
In vivo nano-analysis of cardiac excitation-contraction coupling.
Project/Area Number |
18K06878
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
小比類巻 生 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (40548905)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
照井 貴子 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (10366247)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 興奮収縮連関 / in vivoイメージング / 動態解析 / サルコメア / Ca2+ / 活動電位 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、申請者らが独自に開発した心筋イメージング技術を駆使し、マウスin vivo心臓の各部位から心筋細胞の膜電位、細胞内Ca2+濃度、サルコメアの動的情報を 高精度・リアルタイムに抽出し、細胞レベルでの興奮収縮連関と心臓のマクロ機能との関連 をナノスケールで、かつ系統的に明らかにし、そこに立脚して「in vivo興奮収縮連関」について 正常心筋と病態心筋(拡張型心筋症、肥大型心筋症、異型狭心症)の差異を明らかにし、心 疾患を生理学的分子論に基づいて定量化・明確化することを目標としている。 本年度は、in vivoでのCa2+濃度の測定方法をアデノウイルスベクター によるZ線のCa2+感受性蛍光タンパク質α-Actinin2-GCaMPと赤色蛍光タンパク質α-Actinin2-TagRFPの2重導入に変更し、これら2種類の融合タンパク質を心筋細胞へ導入可能なウイルスベクターの作成を行った。それと並行してCallMask膜染色試薬および膜電位指示薬Di-4-Anneps、FluoVolt試薬、および前年度に導入した2光路系を用いて、生きたマウスの心臓における心筋細胞の膜電位動態の観察を行い、膜電位の観察に適した顕微鏡の調整と解析に必要なソフトウェアの導入、および観察条件の決定を行った。これらの成果は分子から個体までの階層性を貫く心臓拍動のメカニズムを、系統的に、かつ生理学的 分子論的に基づいて解き明かすことに繋がるものである。 本年度の研究の過程でCellMask試薬による心筋細胞膜の染色によりマウス心筋細胞の介在板が従来考えられていたよりも柔軟であることを発見し、論文にまとめて発表した(Kobirumaki-Shimozawa et al, Nanomaterials, 2020)。その他にも共同著者として論文を2報発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
In vivoでのCa2+動態イメージングを行うにあたり、Ca2+指示薬のin vivo心臓への導入が難しいことは予想外であったが、Ca2+感受性蛍光タンパク質導入でのイメージングに切り替えることにより、高い蛍光強度で精度の高いイメージングを行えるようになり、実験手法の変更はあったが研究は順調に進展している。 In vivom蛍光顕微鏡に導入した2光路系を運用するための光路系の調整が完了し、膜染色試薬や膜電位指示薬を組み合わせて生きた心臓を染色することにより、これまでより格段に精度の向上した計測が可能となった。これらにより、心疾患病態でのCa2+濃度、サルコメア、膜電位の動態変化を抽出することが可能となった。 また、生きたマウスの心筋細胞の筋細胞膜を染色してin vivoイメージングする手法の完成により、生きた心臓の心筋組織における心筋細胞間の介在板の動態を世界で初めてナノメーター精度で動態観察することに成功した。このin vivo介在板イメージングにより、心筋細胞間に存在する介在板は従来考えられていたよりも柔軟な構造であり、収縮が細胞から細胞へと伝播する際に顕著に屈曲していることが明らかとなった。介在板の長さの変化は~30~42μm(30%)で、心臓が働いているときには、それによって生じるメカノストレスが介在板の周辺部に存在するナトリウムチャネル(Nav1.5)を活性化し、それによって心筋細胞間の興奮-収縮結合を効率的に伝達している可能性があることが示された。この成果は論文にまとめて発表した(Kobirumaki-Shimozawa et al, Nanomaterials, 2020)。 以上のように心筋細胞の膜電位、細胞内Ca2+濃度、サルコメアの動的情報を 高精度・リアルタイムに抽出する手法を順調に構築している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに構築した手法を代表的な心疾患の動物モデルに応用し、in vivo心筋興奮収縮連関について検討する。具体的には、心疾 患病態でのCa2+濃度、サルコメア、膜電位の動態変化を抽出することにより、心疾患を生理学的分子論に基づいて定量化・明確化する。疾患モデルに関しては、(1)トロポニンTに変異 (ΔK210)を有する拡張型心筋症(DCM)モデルマウスを用いて、サルコメアのみ ならず膜電位や細胞内Ca2+イオン情報を詳細に調べ、突然死の原因をin vivoで、かつ分子論 的に明らかにする。(2)同じくトロポニンTに変異(ΔE160)を有する肥大型心筋症(HCM)モデルマウスにおいて、in vivo興奮収縮連関にどのような変化が生じているのかを定 量化する。上記2種の心疾患モデルマウスは既に共同研究者から提供されているので、速やかに実験に取りかかる。そのほか、(3)冠動脈入口部にメサコリンを注入することにより作成する冠動脈攣縮性の異型狭心症モデルマウスを使用して、冠動脈の攣縮が拍動リズムの破綻がどのように引き起こすのかを、心臓各部 位の心筋細胞膜の電位や細胞内μm領域でのCa2+濃度変化、それらが周辺の心筋細胞にどの ように伝搬していくかを調べることによって解き明かしていく予定である。 それと並行して、α-actinin-AcGFPやYC-nano140を発現させたマウスiPS心筋細胞(マウスiPS細胞は既に培養を行なっている)を健常マウスや各病態マウスに注入 し、マクロパラメータだけでなく、iPS心筋細胞内のサルコメア動態やCa2+動態、膜電位について解析していく。
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Causes of Carryover |
申請当初購入予定であった動物用パルスオキシメータは別の予算で購入することができたことと、新型コロナウイルス感染症の蔓延による影響で、発表予定であった学会が誌上開催となり旅費が使用されなかったり一部の試薬および消耗品の納入が遅れたため繰越金が生じた。 納入の遅れている試薬・消耗品は本年度中に納品される予定である。 また本年度の実験に使用する遺伝子組み換えマウスの飼育料が当初の予定よりも増加するのでこちらに振り向ける。またCa2+濃度計測の手法をCa2+指示薬からCa2+感受性蛍光タンパク質の発現へ変更したため、遺伝子組み換えに関する試薬の購入を予定より増やす。
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Research Products
(5 results)