2019 Fiscal Year Research-status Report
卵胞発育制御機構の解明と原始卵胞のin vivo activation法の開発
Project/Area Number |
18K06881
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Research Institution | Aichi Medical University |
Principal Investigator |
小松 紘司 愛知医科大学, 医学部, 講師 (40456893)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 卵巣 / 卵胞 / 原始卵胞 / 血管新生 |
Outline of Annual Research Achievements |
卵巣組織培養下で休眠状態の原始卵胞が血清濃度依存的に活性化される事が確認されたため、生体内において血管新生誘導を行う事によって原始卵胞の活性化が促進されるか検証した。血管新生促進因子であるVEGF、HGF、bFGFを生理活性物質徐放剤に浸透させて卵巣嚢に移植し5日後、卵巣を摘出、転写因子FOXO3Aの卵母細胞内の局在を指標として原始卵胞の活性化率を調べたところ、3種類の血管新生促進因子すべてにおいて活性化率の上昇が確認できた。また、活性化された原始卵胞ではKIT ligandの局在が顆粒膜細胞から卵母細胞へと移行することが知られている。そこで血管新生による原始卵胞の発育誘導制御機構を明らかにするため、血管新生促進因子で処理した卵巣におけるKIT ligandの局在を調べた。その結果、血管新生促進因子で処理した卵巣では卵母細胞にKIT ligandが局在している原始卵胞数が増加していることが確認された。これらの結果は卵巣内で血管新生が促進される事によって物質供給量が増加した原始卵胞ではKIT-KIT ligandシグナル伝達経路が活性化され、休眠状態が解除されるという事を示している。卵巣では排卵、黄体形成など周期的に起こる生理現象に伴って血管新生が活発に起こる事から、原始卵胞はこれによって周期的に発育誘導されていると考えられる。 また、本年度の研究過程で、エストラジオールが原始卵胞の発育抑制に関与している事が明らかになってきた。現在、卵巣組織培養によって原始卵胞に対するエストラジオールの作用機序に関して研究を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初、目的としていた生体内における血管と原始卵胞発育の関連性については2019年度までに実験が終了し、論文として発表する事ができた。さらにこの研究過程において、エストラジオール濃度依存的に原始卵胞の休眠、活性化が制御されていることが明らかになってきた。現在、マイクロアレイを用いた解析によってエストラジオールの原始卵胞に対する作用機序の解明に取り組んでおり、エストラジオールによって発現制御されている遺伝子候補が複数特定できている。以上のことから本研究は当初の計画以上に進展していると言える。血管新生、エストラジオールともに性周期に伴って周期的に増減を示す因子である事から、本研究によって生体内における原始卵胞の周期的な発育制御機構を明らかにすることが期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度までの研究によって卵巣内の血管新生が原始卵胞の発育誘導に重要な役割を果たしている事が明らかになった。また、一定以上の濃度でエストラジオールが原始卵胞に作用すると発育が抑制される事も明らかになってきた。今後はエストラジオールの原始卵胞に対する作用機序を解明する事によって、卵巣組織内の原始卵胞発育制御機構を解明すると同時に生体内において原始卵胞の発育を人為的に促進する方法の開発に取り組む。既にエストラジオール阻害剤は癌治療などに用いられているものが複数存在する事から、これらの薬剤を不妊治療に転用するドラッグ・リポジショニングの可能性についても検討して行く予定である。
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Causes of Carryover |
残額が少ないため、必要性のある物品を購入することができなかった。残額調整のために必要性のない物品を購入するよりは2020年度予算と合わせて使用する方が効果的な研究費利用に繋がると考えたため、残額予算を繰り越して2020年度に使用する事とした。
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Research Products
(3 results)