2019 Fiscal Year Research-status Report
ホスホランバンを標的とした新たな環状ペプチド薬の創出と心不全治療薬への応用
Project/Area Number |
18K06892
|
Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
本田 健 山口大学, 大学院医学系研究科, 講師 (30457311)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
酒井 大樹 山口大学, 大学院医学系研究科, 助教 (40464367)
乾 誠 山口大学, 大学院医学系研究科, 教授 (70223237) [Withdrawn]
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 細胞内導入 / 心筋細胞 / ペプチド / ホスホランバン |
Outline of Annual Research Achievements |
心筋小胞体Ca2+取込みポンプ活性の障害は心機能を低下させる。心不全において堅調だが、それにはホスホランバン(PLN)が関与している。本研究では、PLN機能を阻害する環状ペプチドをmRNA/cDNA display法にて探索し、新たな心不全治療薬として創出することを目指している。令和元年度では単離心筋細胞への作用について解析を行った。平成30年度に選別された配列のペプチドを委託および手動合成し、HPLCにて精製して目的物であることを質量分析にて確認した。過去の研究で環状ペプチドが細胞内に取り込まれる報告例があったため、まずは無修飾の状態で、当該ペプチドをラットから単離した心筋に作用させて心筋収縮活性を向上させるか調べたが、そのような活性は認められなかった。そこで心筋細胞内への導入を検討する必要があり、それに必要な細胞膜透過ペプチドの付加および蛍光色素の搭載を行った。しかしながら、蛍光色素の持つ疎水性が細胞内侵入および細胞膜への吸着に寄与すること、また心筋細胞に豊富に存在するLipofuscinに由来する自家蛍光の影響がかなり強いことが判明し、十分なS/N比を得られなかった。そこで、単離心筋内導入をより鮮明に、かつ疎水性の寄与を排除して評価するため、蛍光強度が強く水溶性蛋白質成分であるenhanced GFP (eGFP)を結合した系に切り替えた。膜透過ペプチドは正電荷が多く、その負荷によって生理活性部分に影響を与えることが多いため、以前我々が開発した荷電性を下げたmodified TATを用いた。しかしながら、膜透過活性が不十分であったため、さらに細胞膜透過促進ペプチド (S19)や、心筋細胞指向性ペプチド(primary cardiomyocyte targeting peptide: PCM)の搭載を試み、細胞内導入および心筋収縮力能について現在検討中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年目では、スクリーニングで得られた配列を基にしたペプチドを合成し、単離心筋細胞に対する機能を評価した。細胞膜透過ペプチドの付加および蛍光色素の搭載を行った。特に心筋細胞膜透過が課題であり、細胞膜透過の検討に注力した。蛍光色素の非特異的吸着やLipofuscinに由来する自家蛍光の影響で十分なS/N比を得られず、この面に関しては当初の予定通りにはいかなかったが、過去の細胞内透過アプタマー開発時の経験で、このような事態は想定しており、代替として蛍光強度が強く非特異的吸着が少ない蛋白質性蛍光系に切り替えて対処している。さらに膜透過能の補強構造の付加および心筋細胞のターゲティング能力の搭載など、計画に記載したように、ペプチドのより高度な機能の集積を検討している。
|
Strategy for Future Research Activity |
高機能化したPLN結合ペプチド候補について、まず単離心筋細胞を用いて心筋収縮力および、より詳細な細胞内イベント解析としてCaイオントランジェントのイメージング解析を行っていく。また、単離した心臓を灌流した状態でペプチドを作用させ、whole組織としての心機能を評価していく。これらの評価で良好な結果が得られれば、マウス血清を単離して、その中でのペプチドの安定性(分解)をHPLCによる評価系を立ち上げて、調べていく(複数の候補ペプチドのさらなる選別の基準とする)。その後、良好なものに関して、正常マウスそして心不全モデルマウスにおいて、in vivoにおける心機能への影響を評価していく。単離心筋および心臓組織において、特に細胞内あるいは組織内浸透が低調な場合、またそれらはクリアしても妥当な活性が得られなければ、改めてフィードバックして他の候補配列ペプチドを試みる。また、高機能化のためのペプチドの付加により活性が減弱する、などといった不足の事態も、経験上十分起こり得る。その場合は、高機能化ペプチドをあらかじめ付加した状態で、その延長配列上にランダム化した配列を持つペプチドライブラリーを導入し、これまでと同様に改めてスクリーニングすることで、機能化ペプチドが連結された状態でもPLN結合領域に影響せずに活性を保持できる構造を持つものを獲得していく。
|
Causes of Carryover |
2019年度に使用予定であった試薬類が、新型コロナウイルス感染拡大の影響で年度中に納入が困難な状況になったため、次年度での購入にまわしたため。
|
Research Products
(4 results)