2019 Fiscal Year Research-status Report
新規心線維化シグナリング分子の同定と拡張不全治療への応用
Project/Area Number |
18K06898
|
Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
岩田 和実 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (60305571)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 みさき 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80533926)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 心線維化 / 活性酸素種 / NADPHオキシダーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
我が国では左室駆出率の保持された心不全 (Heart Failure with Preserved Ejection Fraction: HFpEF) が心不全患者の50%以上を占めるものの、予後を改善する治療法がない現状である。HFpEFの主因は心筋細胞の肥大と線維化による拡張不全であることから、線維化を阻止する新しい薬物の登場が待たれる。本研究の目的は心臓の線維化を惹起する新規シグナリング分子の同定と、HFpEF 治療への応用である。申請者はこれまで活性酸素種 (ROS) 産生酵素であるNADPHオキダーゼの誘導型分子種、NOX1の遺伝子欠損マウス (Nox1-KO) を独自に作製し、アントラサイクリン系抗腫瘍薬であるドキソルビシン(DOX)投与によって急激に惹起される心臓の線維化がNox1-KOで強く抑制されることを報告した。前年度までの検討から心筋細胞のNOX1は心線維芽細胞の増殖因子を増加させるのみならず、抑制因子の産生もしくは活性を抑制している可能性が示された。当該年度にはNOX1が線維化抑制因子を調節しているか否かを明らかにするために、心線維芽細胞のTGFβおよびFBS刺激による細胞増殖に対するNOX1欠損心筋芽細胞ホモジネートの効果について検討した.NOX1欠損心筋芽細胞ホモジネートを心線維芽細胞に処置することによりTGFβ(10ng/ml)およびFBS(1%)による細胞増殖は有意に抑制された。増殖抑制因子を同定するため、NOX1欠損心筋芽細胞ホモジネートをDNase I, RNase AもしくはProteinase Kで処置したところ、Proteinase Kの処置においてのみ細胞増殖の抑制効果が消失し、著明な細胞増殖亢進が認められた。これらの結果からNOX1により調節される増殖抑制因子はタンパク質であることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度にNOX1欠損心筋芽細胞のホモジネートを熱処理したところ非熱処理の野生型細胞のホモジネートと同程度まで増殖の活性が増加しすることを見出し、NOX1は心線維芽細胞の増殖因子を増加させるのみならず、新たに抑制因子の産生もしくは活性を抑制している可能性が示された。このため当該年度予定していた心筋NOX1により調節される心線維芽細胞の増殖に関わるシグナリング分子の同定が遅れている。 新たに,NOX1による心線維芽細胞の増殖抑制因子が1)TGFβ,FBS等の増殖刺激に対して抑制作用を示すこと、2)プロテアーゼの処置により抑制作用が消失することからタンパク質であること,3)細胞培養上清には分泌されず,細胞の傷害もしくは細胞死により細胞外に放出されることを見出した。今後,NOX1により調節される心線維芽細胞増殖および抑制因子の同定を行うことにより、心線維化におけるNOX1の役割を明らかにする予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
予備的な検討からNOX1により調節される心線維芽細胞の増殖抑制シグナリング分子が,細胞接着に関わる分子である可能性を示す実験結果を得ている。野生型およびNOX1欠損細胞において細胞接着に関わる分子の遺伝子およびタンパク発現を検討する。線維化に関わる分子を同定するため、野生型と Nox1 欠損細胞でタンパク発現に差異を認めた候補分子について、ゲノム編集により候補分子を欠損させた H9c2 細胞を作製する。それぞれの細胞ホモジネートを心線維芽細胞に添加することにより、細胞の増殖に影響が認められる分子を同定する。同定したタンパクを大腸菌で発現させ精製する。精製したタンパク質をマウスの心線維症モデルに投与し線維化に対する効果について検討する。心線維化の動物モデルとしては HFpEF モデルである食塩感受性 Dahl ラット、アンギオテンシンIIの持続投与による高血圧症モデル、冠動脈の結紮による心筋梗塞モデル、大動脈弓狭窄による心肥大モデル、ストレプトゾトシンによる糖尿病モデルマウスを用いる。線維化の評価は組織学的(シリウスレッド染色)および生化学的検討(ハイドロキシプロリン含量およびフィブロネクチン発現量)により行う。シグナリング分子の線維化抑制機構をタンパク質関連データベース TogoProt から予測し、初代培養心線維芽細胞の細胞増殖およびコラーゲン産生を指標として検証する。予測の分子機構が検証出来なかった場合、シグナリング分子で刺激した心線維芽細胞の網羅的解析により心線維化促進機序を明らかにする。
|