2018 Fiscal Year Research-status Report
ANPの組織繊維化抑制作用の機序解明と肺線維症治療への応用
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18K06909
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
三浦 浩一 九州大学, 医学研究院, 助教 (20360349)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
錦織 充広 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, その他, 特任研究員 (00633645)
野尻 崇 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (50570553) [Withdrawn]
熊添 基文 九州大学, 農学研究院, 学術研究員 (70737212)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 組織繊維化 / Hippo経路 / PAK4 / ANP |
Outline of Annual Research Achievements |
不死化内皮細胞SVECにレトロウイルスを用いてANP受容体を安定発現させ、ANPの細胞内シグナル伝達経路の解析を行った。 その結果、(1) ANPが組織繊維化抑制に関わるHippo経路を活性化すること、すなわちLATS1/2やYAPのリン酸化を顕著に促進することを見出した。またこれに付随してYAPの核外移行やYAPの標的分子であるCTGFやCyr61の発現抑制も観察された。(2) ANP刺激前後に発現量が変動する遺伝子をマイクロアレイにより解析し、KEGGデータベース等を用いてpathway解析を行ったところ、Hippo経路だけでなく、組織繊維化と深く関連する炎症関連因子の発現変動が観察された。(3) 質量分析機を用い、ANP受容体に結合するタンパク質を同定した。(4) ANPの下流シグナル分子であるPAK4とHippo経路の関連を解析したところ、PAK4の発現抑制によってANPによるHippo経路の活性化が阻害されること、反対にPAK4の活性型変異体の過剰発現によりHippo経路が活性化されることを見出した。 以上の結果は当初の予想通り、ANP、Hippo経路および組織繊維化の関連を強く示すものであり、繊維化を抑制する薬剤の開発に寄与するものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞内シグナル伝達経路の解析によって、ANPがHippo経路を活性化することを見出したこと、またマイクロアレイ解析の結果によってもHippo経路の活性化が裏付けられたこと、さらにPAK4がHippo経路の上流のキナーゼであることを同定できたことが本研究期間における大きな進展である。さらに質量分析により、ANP受容体と結合するタンパク質も複数同定済みであり今後の研究の新たな展開が見込まれる。一方、ヒトレベルでのANPの抗繊維化作用の検討を担当していた研究分担者が一身上の都合により研究職から離れることとなり、今後の計画変更を余儀なくされた。また、研究代表者も所属研究機関の変更により新しい研究室での研究環境のセットアップにエフォートの多くを割かざるを得ず、現在早急に研究体制を再構築中である。以上の通り予期していない事はあったものの、本研究課題の中心的目標であるANPとHippo経路との関連を明確に示す結果が得られたことから、おおむね順調に進展している、と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
ANPによるHippoシグナルの制御と組織繊維化の促進に関わるTGFbetaシグナルとの関連性を新たに検討する。具体的にはTGFbetaによるCTGFやCyr61の発現誘導に対するANP、PAK4、LATS1/2およびYAPの関与の可能性を検討する。また、マイクロアレイ解析を用いて、TGFbeta刺激により発現誘導される遺伝子のうちANP刺激によって発現が抑制される遺伝子を同定する。またANP受容体結合タンパク質の機能解析、特にHippo経路との関連を検討する。以上の解析によりANPの抗繊維化作用の分子メカニズムの解明と、繊維化抑制薬開発のためのターゲットの同定を追求する。なお、研究グループのメンバーの辞退や所属の変更に伴い、研究計画のうちヒトレベルでの解析は遂行が難しいため中断する。
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Causes of Carryover |
当該年度に研究代表者の所属研究機関が変わり、その異動のために一時的に研究を中断した。そのため予定していた研究が先延ばしとなったため次年度使用額が生じた。今年度は前年度に行えなかった実験も含めて研究を遂行する予定である。
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