2019 Fiscal Year Research-status Report
結合組織の恒常性を維持する新規メカニズムの解明と応用
Project/Area Number |
18K06913
|
Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
森田 強 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (80403195)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 肝臓 / 線維化 / thymosin |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、肝線維化におけるthymosin-β4(Tβ4)の機能を明らかにするために、3種類の遺伝子改変マウスを作成し、肝線維化に対する耐性変化を観察している。Tβ4は、44アミノ酸からなる非常に小さなタンパク質であるが、細胞内では単量体アクチンと結合することでアクチン線維のダイナミクスを制御している。一方、この分子は細胞外にも分泌され、部分分解を受けてN末端の4アミノ酸(SDKP)からなる生理活性ペプチドとしても機能する。私は、Tβ4欠損マウス(null)に加えて、単量体アクチンとの結合部位に変異を導入したL17Aマウス、およびN末端のアミノ酸配列に変異を加えたマウス(S2A/D3A)の3系統を樹立し、解析を行っている。本年度は、この3系統のマウス全てにおいて十分な個体数が確保できるようになったため、それぞれに四塩化炭素を腹腔内投与することで肝傷害を誘発し、肝線維化の進行過程を追った。その結果、野生型マウスと比較して、nullマウスではcollagen1A1、collagen3A1の発現が有為に亢進しており、また線維化のマーカー遺伝子であるalpha smooth muscle actinやHSP47の発現も非常に高いことが明らかとなった。一方、L17AマウスおよびS2A/D3Aマウスではnullマウスに比べて線維化の進行度合いが緩やかであり、特にL17Aマウスでは野生型マウスとほぼ代わりがなかった。以上の結果は、Tβ4が強力な内因性抗線維化因子であることを示している。一方で、Tβ4の示す抗線維化効果には、細胞内における単量体アクチンとの結合および細胞外におけるSDKPペプチドとしての機能の両方を必要としないことが示唆されたことから、これまで知られていたTβ4の機能とは異なる新たな作用機序が存在するものと思われる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、作成が遅れていた3系統の遺伝子改変マウスも十分匹数確保できるようになり、当初予定していた実験を概ね執行することが出来た。
|
Strategy for Future Research Activity |
上述の3系統マウスに関しては、さらに詳細に肝線維化過程を比較解析するとともに、Tβ4の抗線維化効果に必要な未知の機能を明らかにすべく、4系統目の遺伝子改変マウス作成を計画している。
|
Causes of Carryover |
70000円ほど残金が生じたが、概ね計画通り予算執行されたものと考えている。次年度では、予定されていなかった遺伝子改変マウスの作成を行う予定であるため、これの一部に繰り越された予算を使用する予定である。
|
Research Products
(1 results)