2018 Fiscal Year Research-status Report
小胞体ストレス応答による病原性T細胞の生成と膠原病の発症機序の解明
Project/Area Number |
18K06933
|
Research Institution | 株式会社膠原病研究所 |
Principal Investigator |
積山 賢 株式会社膠原病研究所, 研究部, 主任研究員 (20514607)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 全身性エリテマトーデス(SLE) / 小胞体ストレス / CD4 T細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
全身性エリテマトーデス(SLE)が発症する際、T細胞において小胞体ストレス応答が働いているかを検討した。マウスに卵白アルブミン(OVA)を繰り返し投与し、SLEの発症を誘導した。これらのマウスの脾臓からCD4 T細胞を単離し、タンパク質を抽出して、小胞体ストレス応答関連分子の発現をウエスタンブロットにより検討した。その結果、正常マウスと比較して、SLEを発症したマウスのCD4 T細胞では、一部の小胞体ストレス応答関連分子(Bip、eIF2alpha、リン酸化e-IF2alpha)の発現が増加していた。またこれらの分子の発現増加は、私達が病原性T細胞として着目している一部のCD4 T細胞分画において確認された。一方で、小胞体ストレス応答関連分子のうち、CD4 T細胞におけるIRE1、PERK等の発現は、正常マウスとSLE発症マウスの間に差は見られなかった。これらのことから、SLEの発症時において、病原性CD4 T細胞では小胞体ストレス応答が働いており、このうち一部の小胞体ストレス応答経路が特異的に活性化していることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SLE発症マウスの脾臓のCD4 T細胞における小胞体ストレス応答の検討を、概ね予定通りに完了できたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
①小胞体ストレス応答がどのようにT細胞の変調に関わるかを検討する。小胞体ストレス誘導剤を用い、in vitroにおいて小胞体ストレス応答により病原性T細胞の生成を誘導できるかを検討する。ナイーブCD4 T細胞を小胞体ストレス誘導剤と培養して小胞体ストレス応答を誘導し、これにより病原性CD4 T細胞に似た性質へと変化するかを検討する。またこの細胞を抗CD3/CD28抗体で刺激培養し、培養上清中のサイトカインをELISAにより検出する。さらに、ERストレス応答がどのような分子を介してT細胞の変調を誘導しているかを検討する。 ②小胞体ストレス応答はCD4 T細胞を変調させ、SLEの発症に関与するかを検討する。マウスにSLEの発症を誘導する際、小胞体ストレス誘導剤または阻害剤を投与し、病原性T細胞の生成および組織傷害の有無、程度を解析する。これにより、小胞体ストレス応答と病原性T 細胞生成の関連をin vivoで解析し、SLEの発症における小胞体ストレス応答の関与を検討する。マウスにOVAを繰り返し投与し、SLEの発症を誘導する。その際、小胞体ストレス誘導剤タプシガルジンまたはツニカマイシン、小胞体ストレス阻害剤GSK2606414またはSTF083010を、それぞれOVAと共に投与する。組織傷害として糸球体腎炎を評価するために、尿を回収して尿中アルブミンをELISAにより検出すると共に、腎臓の組織切片を作製して病理学的評価を行う。また細胞傷害性T細胞(CTL)の生成を検討するために、細胞内染色により脾臓、腎臓のIFNγ産生CD8 T細胞をフローサイトメーターで検出する。さらに病原性 CD4 T細胞をフローサイトメーターで検出し、当該細胞の生成を検討する。加えてこの細胞を磁気ビーズで単離し、抗CD3/CD28抗体で刺激培養後、培養上清中のサイトカインをELISAにより検出する。
|