2021 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of inhibitory mechanism of binding of long noncoding RNA via arginine methylation and its physiological significance
Project/Area Number |
18K06939
|
Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
黒川 理樹 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (70170107)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | アルギニンメチル化 / RNA結合タンパク質 / TLS / FUS / lncRNA / pncRNA-D |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、前年度に見出したTLS・FUSに結合する新規lncRNAの詳細な解析を行った。現在までに、TLSは、相分離研究のモデル系として生化学・分子生物学・構造生物学研究に用いられ、多くのトップ学術誌の論文が発表されてきた。TLSの構造と機能には、RNA結合が重要な役割を果たしている。また、TLSのRNA結合が相分離の制御にも関与することが示唆されている。したがって、TLSに結合する新規RNAの同定は、相分離研究を推進するものである。 しかしながら、TLSに結合するRNAは、私どものpncRNA-D以外、あまり報告されていない。そこで、新規lncRNAの同定して、相分離現象への効果を検討した。大腸菌で発現したGST-TLSに、HeLa細胞の総RNAを結合させ結合画分を調製した。このTLS結合性ヒトRNAをヒトlncRNAマイクロアレイ(Agilent)で解析し、結合したRNAシグナルを検出した。この結果、対照のHeLa細胞RNAに比べて、GST-TLS結合画分で10倍以上シグナルが増加したlncRNAは51種類が見出された。20倍以上のシグナル増加が見られたlncRNAも11種類が検出された。この中からTLSに強い結合のある5種類のlncRNAに絞り解析を進めた。このうち4種類のlncRNAに相分離を抑制する効果が検出された。最近、片平らとの共同研究でpncRNA-Dが相分離依存的な沈殿形成を抑制する成果を得ている。今回、このpncRNA-Dに続く4種類のlncRNAに相分離抑制効果が見出された意義は大きい。現在、これらのlncRNAのHAT活性への効果の検証を計画している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
実験計画で予定された項目は、9割以上完遂した。さらに、新規に同定されたlncRNAが相分離抑制効果を示すことを明らかにした。これは、当初の目的を越える発見である。
|
Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、前年度に見出した新規lncRNAの詳細な解析を行った。その結果、TLSの相分離現象を抑制するlncRNAを同定できたのは予想外の成果であった。また、本研究では、当初の目的は達成されている。すわなち、TLSメチル化はpncRNA-D結合を抑制する。TLSのHAT阻害効果には、pncRNA-D結合が必須なので、TLSメチル化が特異的RNA結合を抑えHAT活性阻害を抑制することになる。今回の新規lncRNAも、メチル化TLSへの結合抑制が生じる可能性が高いので、現在これを検証中である。さらに、新規lncRNAによるTLSのHAT阻害の抑制効果も検証している。新規に同定されたlncRNAに関して、ノックダウンおよび強制発現実験を行い、HAT阻害による細胞増殖等への効果も探索する。この結果は、アルギニンメチル化がTLSを介して、lncRNA機能をグローバルに制御する、新しい仕組みを提示する。これは、アルギニンメチル化によるTLSのHAT阻害の生物学的意義を検証する成果となる。今回は、新規lncRNAに相分離制御活性が見出された。転写や翻訳など多様な生命現象に関与する相分離を制御するlncRNAの存在が示された生物学的意義は大きく、新たな研究分野の展開が期待される。
|
Causes of Carryover |
実験計画は、問題なく進行した。その過程で使用予定の試薬等の支出が予想より低額であった。さらに、継続的に経費節減に努めたことが奏功した。これらの理由により、次年度の使用額が生じてきた。これにより、本課題の一年間の延長が再度認められた。この予算は、上述の【今後の研究の推進方策】の実験等に使用する予定である。
|
Research Products
(3 results)