2019 Fiscal Year Research-status Report
ゼブラフィッシュを用いた9p21に存在するヒト疾患に関連する機能多型の同定
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18K06943
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
木村 哲晃 国立遺伝学研究所, ゲノム・進化研究系, 特任研究員 (60465250)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | In vivoエンハンサー解析 / 緑内障 / GWAS SNPs |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトの9p21領域にある疾患関連SNPsのから真の病因となっている多型を同定することを目的に、ゼブラフィッシュを用いたエンハンサー解析を行った。 2018年度はゲノムワイドな関連解析の結果を集めたサイトであるGWAS Catalogを利用して緑内障と関連する一塩基多型(SNP)からヒトの9p21領域にあるものをリスト化し、それらと連鎖不平衡にあるSNPを全て抜き出した。これらのうち、UCSCゲノムブラザーの情報をもとにエンハンサー領域と予想されるオープンクロマチン領域や転写因子のChIP-Sepシグナルの領域にあるSNPs選択し、ゼブラフィッシュを用いたin vivo enhancer analysisを行った。しかし、このような領域にないネガティブコントロールとした領域がゼブラフィッシュの目においてGFPの発現を誘導できたことから、2019年度は9p21領域の緑内障のGWAS SNPsと連鎖不平衡にある全てのSNPsへと対象を広げた。これまでに11領域がゼブラフィッシュの目においてGFPの発現を誘導しているが、7領域はオープンクロマチン領域や転写因子のChIP-Sepシグナルの領域ではない領域であった。 また、近年CRISPR/Cas9システムを利用したノックインが培養細胞で可能になってきている。そこで、目的のSNPがヘテロ接合型になるような多型を導入するためにRPE1細胞株を用いて1本鎖オリゴデオキシヌクレオチド(ssODN)を鋳型としたCas9によるノックインを試してみた。エレクトロポレーション法によりCas9タンパク質とガイドRNAの複合体とssODNとを細胞に導入したところ、150細胞のうち 5細胞でノックインが起こっていた。5細胞のうち3細胞がssODN由来のアレルと元のアレルのヘテロ接合型であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度に確立したゼブラフィッシュを用いたヒトのエンハンサー活性解析の系を使って実験を進めている。UCSCゲノムブラウザーの情報からはエンハンサー活性がないと思われる領域でもゼブラフィッシュの目においてGFPの発現を誘導することがあった。そのため、スクリーニングするエンハンサー領域をGWAS SNPsと連鎖不平衡にあるSNPを含む領域全てに拡張した。このうち8割のスクリーニングが現在までに完了した。 また、新たに培養細胞に任意の1塩基多型を導入することに成功した。ヒト培養細胞を用いた標的プロモーターの同定とアレル間におけるエンハンサー活性の差異の解析を行うためには、解析したいSNPがヘテロ接合体である培養細胞が必要となる。しかし、ヒトの不死化細胞は種類が限られており必ずしも解析したいSNPがヘテロ接合体であるか否かはわからない。そのため、目的のSNPがヘテロ接合型になるような多型を導入する技術が必要であった。そこで、Cas9と1本鎖オリゴデオキシヌクレオチド(ssODN)を鋳型としたノックインをRPE1細胞株に対して行ったところ低い確率ながらも目的のSNPをヘテロ接合型へと変えることができた。これにより解析したいSNPをヘテロ接合型に持たない細胞株でも実験に使用できるようになり、様々な組織由来の培養細胞でSNPのアレル間におけるエンハンサー活性の差異の解析が行えるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画には無かったが、次世代シーケンサーの解析コストが予想以上に安くなったため網膜色素上皮細胞株と線維柱帯細胞株を用いたATAC-seqを行う。これによりそれぞれの細胞でエンハンサーとして働く9p21の領域を同定し、ゼブラフィッシュでエンハンサー活性のあった領域とを比較しオーバラップする領域を探すことでエンハンサーを同定する。同定したエンハンサーの多型部位がヘテロ接合型になっていない場合はCas9とssODNにより変異を導入してヘテロ接合型へと変換する。その後、次世代シーケンサーを用いたallele-specific chromosome conformation capture (3C) sequence (AS3C-seq)とRNA sequence (RNA-seq)を行い、多型のアレル間におけるエンハンサー活性の差異を同定する。GWAS SNPと連鎖不平衡にある多型の中から真の機能多型とその標的プロモーターを明らかにする。
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