2019 Fiscal Year Research-status Report
オートファジー活性を基盤とした新たな癌治療戦略の確立
Project/Area Number |
18K06954
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
井上 純 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 准教授 (50568326)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | オートファジー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、癌病態におけるオートファジー障害の生物学的な意義を詳細に理解すると共に、オートファジー障害を持つ癌あるいはオートファジー活性化癌に対する各々の治療戦略およびオートファジー活性の測定法を確立することを目的として研究を行っている。 本年度では、マウス乳癌細胞株およびマウスメラノーマ細胞株を用いて、CRISPR/Cas9システムにより、オートファジー関連遺伝子を欠損した細胞株を樹立した。それらのオートファジー欠損細胞では、造腫瘍能が部分的に亢進することを見出した。さらに、親株とオートファジー欠損細胞における遺伝子発現の比較により、オートファジー欠損細胞において、活性化する遺伝子群およびネットワークを同定した。これらの分子群の活性化がオートファジー障害を持つ癌細胞の悪性化に寄与する可能性が示唆された。一方で、これまでに、我々は、癌抑制型マイクロRNAであるmiR-634は、オートファジーを含め、複数の細胞生存システムを標的とすることで非常に強力な抗腫瘍効果を発揮することを見出してきた。本年度において、LNP(lipid nanoparticle)を介したデリバリーシステムにより、合成2本鎖miR-634の全身投与は、膵癌担癌マウスにおいて、顕著な抗腫瘍効果を発揮することを見出した。このことは、miR-634製剤の有用性だけでなく、オートファジーの活性化が癌の悪性化に寄与する癌種に対しては、オートファジーを阻害する治療戦略が有用である可能性を示唆している。このように、本年度で得られた研究成果は、今後の研究進展およびオートファジー活性を基盤とした新たな癌の治療戦略の確立に繋がることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに本研究課題に関する論文2報を報告してきた。本研究課題は、当初の研究計画に沿って、順調に進行しているものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、引き続き、当初の研究計画通り、癌におけるオートファシー障害の生物学的意義を詳細に理解するとことを目的として研究を進める。このことは、オートファジーの活性を指標とした新たな癌治療戦略の開発に繋がることが期待される。現在、複数の研究項目が順調に進行しつつあり、今後の研究計画に関しては、特に変更予定等はない。
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