2019 Fiscal Year Research-status Report
腸管上皮完全性維持及び病態におけるプロテアーゼ活性制御の意義に関する研究
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18K06964
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
川口 真紀子 宮崎大学, 医学部, 助教 (90405598)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | HAI-2 / matriptase / prostasin / EpCAM |
Outline of Annual Research Achievements |
すでに当研究室で維持している全身でタモキシフェン誘導性にCreを発現するROSA-Cre-ERT2マウスとHAI-2 floxedマウスを交配し、タモキシフェン誘導性のHAI-2 コンディショナルKOマウスを作製し小腸からのオルガノイド培養を行ったところ、HAI-2欠損オルガノイドではEpcamの分解とClaudin-7の不安定化がみられ、タモキシフェン添加28時間後にはオルガノイドの崩壊がみられた。このことから、HAI-2欠損オルガノイドは、先天性腸上皮異型成症(congenital tufting enteropathy; CTE)の病態を再現していると考えられた。昨年までの研究で、この現象は、HAI-2の標的プロテアーゼであるprostasinを同時に欠損させることで回避できることが明らかとなり、本年度はその詳細な分子メカニズムの解析を行った。HAI-2の標的プロテアーゼであり、腸管上皮においてprostasinによって活性化されることが報告されているmatriptaseの特異的低分子阻害剤をオルガノイド培養液に添加したところ、Epcamの分解とClaudin-7の不安定化及びオルガノイドの崩壊は阻害剤の濃度依存的に抑制された。セリンプロテアーゼインヒビター添加によっても同様にオルガノイドの崩壊は抑制された。これらの結果から、HAI-2はprostasinの活性を制御することでprostasin によるmatriptase活性化を抑制し、腸管上皮の正常性維持に寄与していることが明らかになった。また、HAI-2欠損オルガノイドがプロテアーゼの特異的阻害剤など治療薬の候補となる薬剤の効果の検討や、CTEの病態解明に活用できることが明らかになった。一方で、マウスを用いた生体における検討では、prostasinを同時に欠損してもHAI-2 KOマウスの致死性を回避することはできず、生体内ではmatriptaseがprostasinを介さずに活性化される可能性も示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HAI-2欠損オルガノイドの崩壊は、prostasinの同時欠損、セリンプロテアーゼインヒビター及びmatriptaseの活性阻害によって回避できることが明らかになった。しかしながら、生体においてはprostasinを同時に欠損してもHAI-2 KOマウスの致死性を回避することはできなかった。そこで、matriptase floxedマウスを共同研究者より供与を受け、HAI-2/ matriptase のダブル欠損マウスの作製に着手した。来年度中には生体におけるHAI-2のprostasin, matriptase活性制御の意義について解析をすすめられる状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
新たに導入したmatriptase floxedマウスをHAI-2 コンディショナルKOマウスと交配させ、HAI-2/ matriptase のダブル欠損マウスを作製し、matriptase欠損により、HAI-2 KOマウスの致死性が回避できるか確認する。致死性が回避された場合に、HAI-2 KOマウスに対するmatriptaseの特異的低分子阻害剤の効果について検討する。また、同時にHAI-2/ matriptase のダブル欠損オルガノイドの培養を確立し、matriptase活性を測定するとともに、Epcamの分解及びオルガノイドの崩壊への効果を確認する。
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Research Products
(6 results)