2022 Fiscal Year Research-status Report
転写制御因子SUZ12によるレドックス制御を介した足場非依存性増殖機構の解析
Project/Area Number |
18K06969
|
Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
石川 文博 昭和大学, 大学共同利用機関等の部局等, 講師 (60515667)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 一憲 昭和大学, 薬学部, 講師 (60349040)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 足場非依存性増殖 / がん転移 / レドックス / ミトコンドリア |
Outline of Annual Research Achievements |
SUZ12によるレドックス制御を介したアノイキス抑制機構の詳細及びがん転移への関与を明らかにするため、2022年度もSUZ12によるアノイキス抑制機構と酸化ストレス克服機構の解明に焦点を当てて検討を行った。 1)SUZ12によるアノイキス抑制機構 昨年度までの解析から、SUZ12は接着喪失によって生じるROSによって活性化されるアポトーシスの内因性経路を抑制することで、がん細胞をアノイキスから保護していると考えられた。昨年度、接着喪失下特異的にPUMA遺伝子の発現が誘導されることを見出したため、SUZ12とPUMAをダブルノックダウンしてアノイキスへの影響を調べたところほとんど影響を示さなかった。従って、SUZ12により抑制されるアノイキス促進因子は別に存在する可能性が示唆された。今後は既知の内因性経路に関わる因子について、RNA干渉やゲノム編集技術を用いて機能的スクリーニングを行い関与因子の同定を試みる。 2)SUZ12による酸化ストレス克服機構の解明 昨年度までにRNAシークエンス (RNA-Seq)によってSUZ12の発現抑制によって影響を受ける遺伝子群の中から、文献的に細胞死または酸化ストレス制御に関わることが知られる24遺伝子を抽出し、この中から実際にSUZ12の発現によって制御されるエネルギー代謝やアポトーシスに関係する遺伝子を同定した。2022年度はこの理解をさらに深めるため、接着喪失下での遺伝子発現をRNA-Seqによって検討したところ、驚くべきことに24時間以内に5000以上の遺伝子が有意に変化していた。このうち、約300の遺伝子群がSUZ12の発現によって接着喪失下特異的に影響を受けていることが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
昨年度に引き続き、新型コロナウイルス感染拡大に伴う対応に追われ、2022年度はかなり研究時間が限られたため、予定していた計画の大幅な遅延が継続している。 1) SUZ12によるアノイキス抑制機構 SUZ12によるがん細胞のアノイキス抑制メカニズムについて、アポトーシス内因性経路に関与するBcl-2ファミリータンパク質PUMA遺伝子に注目して解析を行った。しかしながら、siRNAによるノックダウンの結果、SUZ12によるアノイキス抑制にPUMAは関与している可能性が低いと考えられた。従って、その他の内因性経路に関与するBcl-2ファミリータンパク質の関与が示唆された。 2) SUZ12による酸化ストレス克服機構の解明 SUZ12は転写制御因子であり、核内で何らかの遺伝子の発現を制御することでその機能を果たしていると考えられる。また、接着喪失下特異的に細胞死を抑制していることから、接着喪失時特異的に遺伝子発現に影響している可能性が考えられた。そこで、RNA-SeqによりSUZ12ノックダウンにより接着喪失下特異的に発現に影響が出る遺伝子群の抽出を行った。その結果、約300の遺伝子の発現がSUZ12の影響を受けていることが明らかになった。2023年度は、これらの候補遺伝子についてRT-PCRやウエスタンブロットによりRNA-Seqの結果を確認し、SUZ12によるアノイキス抑制への関与を検討する。また、当該機構の人為的制御によるがん転移抑制の可能性については、未だ関与因子の同定にまで至っていないため、まだ着手できていない。
|
Strategy for Future Research Activity |
1)SUZ12によるアノイキス抑制機構 2022年度に得られた結果から、SUZ12のアノイキス抑制に関与する因子を同定する必要が生じた。そこで、ミトコンドリアの外膜透過性に関わるBcl-2ファミリータンパク質およびカスパーゼ9の活性制御因子について、shRNAまたはcDNAを過剰発現することで遺伝子発現を制御し、アノイキスへの関与を検討する。あわせて、今回のRNAシークエンスの解析から同定された接着喪失下特異的にSUZ12によって発現が制御される約300の遺伝子も同様に、接着喪失に伴う酸化ストレス及びアノイキスへの影響を調べる。関与が認められた際には、当該遺伝子による酸化ストレス制御機構とSUZ12による遺伝子発現制御機構について解析を行う。 2)当該機構の人為的制御によるがん転移抑制の可能性 関与因子が同定された際には、転移性がん細胞でその遺伝子を操作し、免疫不全マウスへ移植することでがん転移への寄与を解析する。
|
Causes of Carryover |
2022年度も新型コロナウイルスの感染拡大の継続により、大学でのPCR検査の運営に多大な時間を費やすこととなった。このような状況のため、実験に費す時間がとれず大幅な研究の遅れが生じ、予定していた研究を行うことができなかった。2023年度は前年度に計画していた実験を遂行するために細胞培養試薬や分子生物学用試薬に使用する予定である。
|
Research Products
(1 results)