2019 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of the role of denitrosylation enzyme in type 2 diabetes pancreatic beta cell dysfunction and search for new therapeutic agents
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18K06970
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
谷岡 利裕 昭和大学, 薬学部, 准教授 (80360585)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
篠崎 昇平 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 非常勤講師 (40622626)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | GSNOR / beta cell / リバーロキサバン / S-nitrosylation / iNOS |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、S-ニトロソ化タンパク質からNOを取り除く酵素として知られるS-nitrosoglutathione reductase (GSNOR)を標的分子として膵β細胞における役割を解明すべく、今年度は、ノックアウトを用いた解析およびINS-1細胞を用いた解析を行った。まず、WTおよびKOマウス由来からisletを調製した後、IL-1β刺激による各種タンパク質およびリン酸化の程度を検討した。炎症刺激によるPDX-1で現低下の程度はKOマウスで減少し、それに相関してアポトーシスの亢進を認めた。また、WT由来isletで認められた炎症刺激によるGSK-3β(Ser9)のリン酸化抑制は、KOマウスにおいてより顕著であり、GSNORの抗炎症分子としての機能を明らかにすることができた。これらのことから炎症刺激によるPDX-1発現減少には、GSK-3βの発現(リン酸化)が深く関与しており、一方で、GSK-3βがGSNORの標的分子の1つである可能性が示唆された。また、INS-1細胞を用いた系において、GSNOR活性上昇を担う分子のスクリーニングを行ったところ、抗凝固薬リバーロキサバンがGSNOR活性を上昇させることを見出した。リバーロキサバンは血液に作用する医薬品であるが、膵β細胞においても機能している可能性を考え、インスリン分泌に及ぼす効果を検討した。その結果、炎症刺激によるインスリン産生低下は、リバーロキサバン処理により回復した。また、リバーロキサバンは膵β細胞において炎症性分子であるNF-κBやMAPKの活性化も抑制した。これらの結果は、リバーロキサバンはGSNOR活性化を介してインスリン抵抗性改善を担っていることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、KOマウス由来isletを用いた解析を行い、WTマウスとの比較検討を行った。GSNOR KOマウスのβ細胞では炎症刺激によるPDX-1発現減少およぼアポトーシス増強が認められたことから炎症反応を増強したことから、生体内膵β細胞におけるGSNORは抗炎症作用に働く分子であることが明らかになった。また、抗凝固薬のリバーロキサバンが血液以外の作用点を持っていること、すなわち膵β細胞のGSNOR活性を介してインスリン分泌産生を亢進させる能力を持っていることを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、糖尿病モデルマウスを用いて、WTマウスおよびGSNORKOマウスの血糖値、血中インスリン濃度、isletの形態、PDX-1発現、GSK-3β発現、アポトーシスの程度などを評価することを行う。また、糖尿病治療におけるリバーロキサバン服用の重要性およびGSNOR活性化によるインスリン抵抗性改善作用を明らかにする目的で、糖尿病GSNORKOマウスモデルマウスを作成し、上記と同様の系を用いて検討を加える。さらに、Th17細胞が様々な疾患の増悪に深く関わっており、またGSNORの免疫における報告もなされたことから、GSNOR糖尿病モデルマウスにおける免疫細胞系特にTh17の異常を引き起こしている可能性を考慮し、免疫学的解析を詳細に行う予定である。 このほか、破骨細胞やマクロファージを用いて系においてもいくつか興味深い結果を見出しており、こられの細胞系におけるGSNORの新規機能解析を行うことにより、総合的にGSNOR分子の生体内機能を明らかにすることを行う予定である。
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Causes of Carryover |
昨年度の使用額に関しては、ノックアウトを再度受精卵から作成したため、当面の間は共同研究をしている日本医科大学法医学で供与して頂き、動物管理維持にかかる費用が少なくなったこと、また、GSNOR活性スクリーニングの系において天然物化合物にかかる経費が削減できたことが考えられる。ただ、ノックアウト自体は供給されているので解析自体に問題はない。現在、ノックアウトマウスの実験系において生体内脂質の重要性が示唆される知見が得られていることから、今年度中にノックアウトマウスの生体内脂質分析の網羅的解析を予定しおり、そちらの解析を外部委託する都合上、解析委託費が高額となるため必要経費と考える。
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