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2018 Fiscal Year Research-status Report

脂肪性軟部腫瘍は正確に病理診断されているか? 実践的診断アルゴリズムの確立

Research Project

Project/Area Number 18K06989
Research InstitutionKobe University

Principal Investigator

廣瀬 隆則  神戸大学, 医学研究科, 特命教授 (00181206)

Project Period (FY) 2018-04-01 – 2021-03-31
Keywords脱分化型脂肪肉腫 / 異型脂肪腫様腫瘍 / 異型紡錘形細胞脂肪腫様腫瘍 / 異型多形脂肪腫様腫瘍 / 同種性分化 / MDM2 / CDK4 / p16
Outline of Annual Research Achievements

脱分化型脂肪肉腫の病理診断におけるMDM2免疫染色とMDM2遺伝子検索の意義を検討した。脱分化型脂肪肉腫では、時に脂肪性腫瘍成分が不明瞭か、あるいは認められないことがあり、その際には診断の難易度が増す。そのような症例を11例集積し、非脂肪性軟部肉腫17例と比較検討した。その結果、MDM2免疫染色陽性とMDM2遺伝子増幅が、脱分化型脂肪肉腫に特異的な異常であり、他の肉腫との鑑別に有用であることを明らかにした。また遺伝子増幅の検出法として、dual color in situ hybridization (DISH)法がfluorescent in situ hybridization (FISH)法と同様に検出感度に優れた方法であり、またDISHがより取り扱いやすい手技であることも示した。一方、p16とCDK4陽性所見は非特異的であった。
最近、提唱された異型紡錘形細胞脂肪腫様腫瘍と異型多形脂肪腫様腫瘍をそれぞれ見出し、病理学的解析を行った。これらは紡錘形細胞脂肪腫と多形脂肪腫に類似しているが、間葉系細胞に異型性があり、異型的脂肪芽細胞が出現する。異型脂肪腫様腫瘍との鑑別が重要であるが、MDM2遺伝子増幅は見られないことを示した。
脱分化型脂肪肉腫の約10%で横紋筋、骨・軟骨など異種性分化を認めることがある。最近、この脱分化領域に稀に多形型脂肪肉腫様領域が生じることが報告され、同種性分化と呼ばれている。この稀少な症例を経験し、病理学的解析を行った。一般的に多形型脂肪肉腫の分子異常は多様な染色体異常とRB遺伝子不活化で特徴付けられる。一方、脱分化型脂肪肉腫で見られた多形型脂肪肉腫様領域は、周囲の異型脂肪腫様腫瘍と同様に、MDM2遺伝子増幅を有していることを明らかにし、多形型脂肪肉腫とは本質的に異なる腫瘍であることを示した。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

「脱分化型脂肪肉腫と未分化多形肉腫の鑑別」を研究目的の一つとして挙げているが、それを達成するために研究実績の概要で述べたように脱分化型脂肪肉腫と非脂肪性肉腫の免疫組織化学および分子遺伝学的解析を行った。脱分化型脂肪肉腫では再発や転移病巣で脂肪性成分を欠くことが稀でなく、その際に未分化多形肉腫との鑑別が困難になる。今回の検討では、脱分化型脂肪肉腫と非脂肪性肉腫との鑑別に、MDM2免疫染色陽性所見とMDM2遺伝子増幅の確認が有用であるという結果を得た。従来はCDK4, p16免疫染色陽性所見も有用とされていたが、これらは非脂肪性肉腫でも高率に陽性となり、特異性には欠ける結果であった。さらに非脂肪性肉腫2例でMDM2陽性、遺伝子増幅が認められたため、病理所見を詳細に再検討し、脱分化型脂肪肉腫であることを確認した。この検討により、当初目的としていたことをおおむね達成できたと考えている。さらに、今後、非脂肪性肉腫での検討を追加し、MDM2解析の特異性を検証していく予定である。
脂肪性腫瘍には多様な腫瘍型が含まれているが、さらに近年、新しい腫瘍概念として、異型紡錘形細胞脂肪腫様腫瘍、異型多形脂肪腫様腫瘍が提唱された。これらについてはまだ報告が乏しく、確立した腫瘍概念ではない。この希少な腫瘍をそれぞれ2例ずつ経験し、その病理学的解析から、脂肪性腫瘍の診断アルゴリズムを作製するうえで重要な知見をえた。
次年度以降、「脂肪腫と異型脂肪腫様腫瘍との鑑別」、「異型脂肪腫様腫瘍の切除断端評価」、「粘液型脂肪肉腫の免疫組織化学的診断」の課題に取り組む予定である。

Strategy for Future Research Activity

「脂肪腫と異型脂肪腫様腫瘍との鑑別」を行うために、診断に有用なバイオマーカーを探索する。脂肪腫と異型脂肪腫様腫瘍をそれぞれ20-30例程度選び、組織マイクロアレイを作製して免疫組織化学的検討を行う。染色はp16に加えて、異型脂肪腫様腫瘍の診断に有用とされているMDM2, CDK4についても行う予定である。さらにDISH法によりMDM2遺伝子増幅を直接評価し、免疫染色結果との相関性を検証する予定である。
「異型脂肪腫様腫瘍(高分化型脂肪肉腫)の切除断端評価」を行うために、後腹膜に発生した異型脂肪腫様腫瘍を20例収集し、p16, MDM2, CDK4免疫染色により断端評価の妥当性について検証する。同腫瘍では腫瘍性組織と既存の脂肪組織との組織学的鑑別が極めて難しく、免疫染色の有用性が確認できれば断端評価、さらには再発予測に有用と考えられる。これは組織マイクロアレイではなく、断端部として切り出された組織ブロックの全体を用いて検討する。
「粘液型脂肪肉腫の免疫組織化学的診断」では、粘液型脂肪肉腫とその鑑別の対象となるような腫瘍群の組織マイクロアレイ標本を用いて、鑑別診断に有用なバイオマーカーを探索する。粘液型脂肪肉腫の診断には、FISH法によりDDIT3再構成を確認する。
「脱分化型脂肪肉腫と未分化多形肉腫の鑑別」では、MDM2免疫染色と遺伝子増幅の特異性、相関性を検討する予定である。免疫染色陽性でも遺伝子増幅のない非脂肪性肉腫を稀に認めることがある。非脂肪性肉腫の症例を追加して、この点を明らかにした。

Causes of Carryover

平成30年度に研究課題で得られた成果を国際学会で発表することを予定していたが、予期せぬ自然災害(台風)とそれに伴う空港閉鎖(関西空港)で学会出張自体が取り消しとなった。そのため当該年度の支出額が減り、次年度使用額が生じた。
当該年度以降の使用計画として、当初の計画通り、抗体、DISH/FISH probe類、試薬類を中心とした消耗品の購入、国内および国際学会への出張旅費、人件費、およびその他への支出に充てる予定である。さらに、当該年度の研究成果から、非脂肪性腫瘍におけるMDM2免疫染色とMDM2遺伝子増幅の相関性をさらに検討する必要性が出てきた。そこでこの研究を進めるために、次年度使用分をその経費(主に消耗品費)に充てる予定である。

  • Research Products

    (4 results)

All 2019 2018

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (3 results)

  • [Journal Article] Diagnostic utility and limitations of immunohistochemistry of p16, CDK4, and MDM2 and automated dual-color in situ hybridization of MDM2 for the diagnosis of challenging cases of dedifferentiated liposarcoma.2019

    • Author(s)
      Kobayashi A, Sakuma T, Fujimoto M, Jimbo N, Hirose T.
    • Journal Title

      Applied Immunohistochemistry & Molecular Morphology

      Volume: 27 Pages: 758-763

    • DOI

      10.1097/PAI.0000000000000677

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] Atypical spindle cell lipomatous tumorの2症例2019

    • Author(s)
      小林杏奈、廣瀬隆則、佐久間淑子、梶本和義、前田尚子、酒井康裕
    • Organizer
      第107回日本病理学会総会
  • [Presentation] 多形型脂肪肉腫様成分を有する後腹膜脱分化型脂肪肉腫の一例2019

    • Author(s)
      稲場礼奈、阿部志保、神保直江、神澤真紀、伊藤智雄、廣瀬 隆則
    • Organizer
      第64回日本病理学会秋期特別総会
  • [Presentation] 異型多形脂肪腫様腫瘍と考えられた1例2018

    • Author(s)
      小松正人、阿部志保、西尾裕美、原仁美、神澤真紀、伊藤智雄、廣瀬隆則
    • Organizer
      第107回日本病理学会総会

URL: 

Published: 2019-12-27  

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