2018 Fiscal Year Research-status Report
膵癌におけるMAPキナーゼ阻害薬耐性機構の解明と新規治療法の確立
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18K06992
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
守山 正胤 大分大学, 医学部, 教授 (90239707)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 膵癌 / MAPキナーゼ阻害薬 / 耐性機構 |
Outline of Annual Research Achievements |
私は、膵癌の上皮内癌と浸潤癌のゲノム異常を比較することにより、①膵癌の浸潤過程で8番染色体短腕が欠失すること、②そのゲノム領域に存在するDUSP4遺伝子の発現低下によりMAPキナーゼが活性化すること、③活性化したMAPキナーゼは膵癌細胞の浸潤能を亢進すること、④MAPキナーゼ阻害薬が膵癌治療として有効であることを明らかにした。しかしながら、これまで施行された臨床試験で膵癌患者に対するMAPキナーゼ阻害薬の有効性は示されていなかった。そこで、生体での膵癌細胞に対するMAPキナーゼ阻害薬の効果を検証するために、ヒト膵癌細胞を同所移植した免疫不全マウスを用いて治療実験を施行した。治療群では投与開始直後から腫瘍は増殖が抑制されて2週目ごろには検出限界値以下まで縮小した。しかし、すぐに抗腫瘍効果は消失して、2週目以降は治療群と対照群の腫瘍はほぼ同様な増大傾向を示した。その結果、治療群の生存期間はわずかに延長したものの、最終的には両群のすべてのマウスが癌死に至った。以上の結果から、治療群ではMAPキナーゼ阻害薬耐性獲得に関わる分子機構が早期に発動されることが示唆された。本研究では、耐性獲得機序の解明と耐性克服のための治療法の開発を目的とする。 今年度は、早期耐性機構に関わる分子の同定を試みた。癌細胞移植後に治療を開始して30日目に全マウスを屠殺して膵腫瘍を摘出した。各膵腫瘍よりRNAを回収してマイクロアレイを用いた網羅的発現解析を施行した。その結果、対照群に比べて治療群の膵腫瘍で有意に(4倍以上)発現が変動している12遺伝子が抽出され、耐性関連遺伝子候補とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の本年度の研究項目は以下の通りであった。 1. 免疫不全マウス(NOD/scid)にヒト膵癌細胞株(MIA PaCa-2)を同所移植3週後に、マウスを2群に分け、治療群に対しMAPキナーゼ阻害薬(PD325901)の経口投与(12.5 mg/kg/mouse/day)を開始する。対照群には同量の溶媒のみを投与する。治療開始30日目に全マウスを 屠殺して膵腫瘍を摘出する。各膵腫瘍よりRNAを回収してマイクロアレイを用いた網羅的発現解析を施行する。対照群に比べて治療群の膵腫瘍で有意に発現が変動している遺伝子を抽出し、耐性関連遺伝子候補とする。 2. 抽出した耐性関連遺伝子の発現変動を検証する。mRNAレベルの検証は、リアルタイム PCR法で行う。タンパクレベルの検証はWestern blot法および免疫組織化学で行う。 3. 抽出した耐性関連遺伝子が実際に耐性獲得に関与しているのか、また、移植実験で用いたMIA PaCa-2以外の膵癌細胞株についても同様の耐性機構が働いているのかについて、in vitroの実験系で検討する。耐性獲得腫瘍で発現が亢進している遺伝子についてはsiRNAを用いたノックダウンで、発現が低下している遺伝子についてはレンチウイルスベクターを用いた一過性遺伝子導入で耐性能がキャンセルされるか否かを検証する。 このうち1については、移植治療実験で得られた膵腫瘍検体を用いた網羅的発現解析が完了して候補遺伝子を抽出することができた。2についても、全候補遺伝子の発現動態をリアルタイム PCR法で確認し、一部の遺伝子に関してはタンパクの発現レベルをWestern blot法および免疫組織化学で確認した。3については、一部の遺伝子の機能解析を施行済みで、現在、残りの遺伝子について解析中である。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 耐性関連遺伝子の発現変動の検証 抽出した12個の耐性関連遺伝子候補の発現変動を検証する。mRNAレベルの検証は、リアルタイム PCR法で行う。タンパクレベルの検証はWestern blot法および免疫組織化学で行う。次に、抽出した耐性関連遺伝子が実際に耐性獲得に関与しているのか、また、移植実験で用いたMIA PaCa-2以外の膵癌細胞株についても同様の耐性機構が働いているのかについて、in vitroの実験系で検討する。耐性獲得腫瘍で発現が亢進している遺伝子についてはsiRNAを用いたノックダウンで、発現が低下している遺伝子についてはレンチウイルスベクターを用いた一過性遺伝子導入で耐性能がキャンセルされるか否かを検証する。 2. 耐性関連シグナルパスウェイの解明 耐性に関わる責任遺伝子が同定された場合、その遺伝子によって活性化されるシグナルパスウェイを解明する。耐性関連候補遺伝子のシグナルパスウェイを構成する分子の中で、標的分子となり得る分子を抽出する。もし既に阻害薬あるいは分子標的薬が存在する分子があれば治療の標的分子候補とする。 3. 耐性制御を併用したMAPキナーゼ標的治療法の開発 MAPキナーゼ阻害薬の耐性に関わる分子を阻害することでMAPキナーゼ阻害薬の効果が回復・改善するか否かをin vitroで検証する。次に、併用治療の有効性をin vivoで検証する。同所移植後にマウスを4群に分け、対照群は溶媒のみ投与する。残りの3群は、MAPキナーゼ阻害薬のみ、耐性関連分子阻害のみ、MAPキナーゼ阻害薬と耐性関連分子阻害の併用である。治療開始後の腫瘤の縮小効果や遠隔臓器(肝、肺、脳など)への転移抑制効果、生存期間の延長効果などを比較する。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] Complete Sequences of the Human T-Cell Leukemia Virus Type 1 Proviral Genomes from Newly Established Adult T-Cell Leukemia Cell Lines in Oita Prefecture, Japan.2018
Author(s)
Fukumoto T, Ikebe E, Ogata M, Kohno K, Kuramitsu M, Sato Y, Fife N, Matsumoto T, Yahiro T, Ikeda M, Kusano S, Okayama A, Hori M, Hijiya N, Tsukamoto Y, Hirashita Y, Moriyama M, Ahmed K, Hasegawa H, Nishizono A, Saito M, Iha H
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Journal Title
Genome Announc.
Volume: 6
Pages: e00090-18
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Association of fibrotic remodeling and cytokines/chemokines content in epicardial adipose tissue with atrial myocardial fibrosis in patients with atrial fibrillation.2018
Author(s)
Abe I, Teshima Y, Kondo H, Kaku H, Kira S, Ikebe Y, Saito S, Fukui A, Shinohara T, Yufu K, Nakagawa M, Hijiya N, Moriyama M, Shimada T, Miyamoto S, Takahashi N
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Journal Title
Heart Rhythm.
Volume: 15
Pages: 1717-1727
DOI
Peer Reviewed
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