2019 Fiscal Year Research-status Report
タイト結合分子による腸上皮幹細胞の新規運命決定機構
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18K06993
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
田中 瑞子 福島県立医科大学, 医学部, 博士研究員 (40583638)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
千葉 英樹 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (00295346)
東 智仁 福島県立医科大学, 医学部, 准教授 (70515072)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | JAMファミリー / CLMP / 蠕動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、タイト結合分子に着目し、腸管幹細胞の運命決定や機能を制御する分子機構を解明することを目的としてきた。1年目の研究でクローディンファミリーの腸管の各細胞における発現分布の検討を終え、その結果を踏まえて、さらに他のタイト結合分子であるJAMファミリーについて検討を行った。 その過程で、JAMファミリー分子の1つであるCLMP(CAR-like membrane protein)に着目した。CLMPは、ヒトの短腸症候群の原因遺伝子として報告されている分子でもあることから、腸の細胞の増殖・分化・機能を制御している可能性が強く疑われたため、さらに解析を進めることにした。まず、CLMPの細胞内ドメインに相当するペプチドを抗原としてCLMPnい 対するラットモノクローナル抗体を作成した。新規抗体がCLMPを特異的に認識することを確認した上で、マウスの腸管を用いてその局在を検討したところ、CLMPは腸管を取り囲む平滑筋層間の細胞に発現していることが分かった。具体的な発現細胞の実態はまだ不明であるが、平滑筋層間でネットワークを作って腸管蠕動を制御するカハール介在細胞の近傍に染色が見出されるため、今後、免疫電顕法によって詳細な局在を明らかにする予定である。 また、一昨年に他の研究室より出たCLMPノックアウトマウスについての論文(Longhorst H et al., Dis Model Mech, 2018)において、腸管と尿管の蠕動に異常が生じていることが報告され、我々の結果とよく一致していることが分かった。現在、染色に使用できるCLMPの特異抗体は市販品では存在しないため、当該論文ではCLMPの局在を明らかにできていない。今後は、CLMPの発現細胞を決定し、詳細な局在とともにCLMPが作る細胞内構造の解析を進め、論文化する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
腸管幹細胞特異的なタイト結合因子を見出すことはできなかったが、その解析の過程で見出したCLMPの局在が予想外であり、腸管(と尿管)の重要な機能の一つである蠕動を司る分子機構の解明につながる見込みができてきたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、樹立した新規抗体を用いて腸管の染色法の改良に取り組み、カハール介在細胞ネットワーク中の具体的にどの部分にCLMPが局在するのかを明らかにする。その上で、免疫電顕と通常の電顕観察によって、CLMPが局在する細胞内構造体を観察し、その機能についての洞察を得ることを目指す。 また、腸管と同様に、尿管も蠕動を行うことが知られているが、尿管にはカハール介在細胞のような蠕動を司令する細胞種はまだ見出されていない。CLMPを指標としてこうした細胞腫の同定を試みる。
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Causes of Carryover |
当初は腸管幹細胞特異的クローディンが見出された場合にオルガノイドを用いた実験を行う予定であったが、そうした実験が必要なくなったため、次年度にCLMPの機能解析を行う際に使用する予定である。
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