2019 Fiscal Year Research-status Report
卵巣癌における,低酸素関連因子の発現からみた組織型の意義:化学療法抵抗性の分別化
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18K06997
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
安田 政実 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (50242508)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢野 光剛 大分大学, 医学部, 客員研究員 (70817064)
長谷川 幸清 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (30534193)
宮澤 昌樹 東海大学, 医学部, 客員講師 (30624572)
宮澤 麻里子 東海大学, 医学部, 特定研究員 (80637091) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ヒストン脱アセチル化酵素 / 卵巣明細胞癌 / 卵巣漿液性癌 / 低酸素誘導因子 / PD-L1 / silibinin |
Outline of Annual Research Achievements |
卵巣明細胞癌106例についてホルマリン固定パラフィンブロック標本を、円柱状に抜きとり、集約して組織マイクロアレイを作成した。免疫組織化学的染色によって、ヒストン脱アセチル化酵素6(HDAC6)、低酸素誘導因子HIF-1α、PD-L1、ARID1a、CD44などを評価・解析した。HDAC6の発現亢進は、ARID1a正常発現群では予後に影響を与えず、ARID1a異常発現群で有意に予後不良であった。またHDAC6とHIF-1α、PD-L1、CD44とは正の相関がみられた。さらに、術前化学療法を施行した進行卵巣漿液性癌88例についても組織マイクロアレイを作成してHDAC6、HIF-α、PD-L1の免疫組織化学的発現を解析した。進行卵巣漿液性癌では、HDAC6の発現は独立予後因子となり、HDAC6とHIF-1αやPD-L1の発現には正の相関を認めた。またHDAC6の高発現群は、術前化学療法の不応例(RECIST:SD/PD)、根治手術困難例、手術不完全切除例が有意に多く、HDAC6が化学療法抵抗性に関与していることが示唆された。
ヒト卵巣明細胞癌培養細胞株を用いてsilibininのHIF-1の非機能化を通じた、併用補助薬としての抗腫瘍効果について基礎的検討を行った。細胞にsilibininを投与しDNAマイクロアレイにより遺伝子の変化を、HIF-1α cell based ELISAによりHIF-1αタンパク量の変化を解析した。Silibininは細胞の生存に係るeIF4eおよびS6遺伝子を減少させることにより、HIF-1αの遺伝子レベルではなくタンパクの合成を抑制させることが強く示唆された。これにより腫瘍微小環境を制御するマスター因子HIF-1αを阻害することで腫瘍選択的にHIF-1の活性化を抑制し、従来のHIF-1α阻害薬に比して副作用を軽減した治療に繋げられるものと期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルスの影響で、本研究に費やせる時間の減少・物品納入の遅延のため本研究についても多少の遅れが生じた。それを取り戻すべく、得られたデータを整理して効率的に実験を進めていきたい。 また、卵巣漿液性癌に関連した結果は現在論文投稿中である。
卵巣明細胞癌株におけるsilibinin投与濃度の再検討、活性型HIF-1への作用についての解析を現在進めており、これまでの研究結果については論文作成中である。
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Strategy for Future Research Activity |
卵巣漿液性癌について得られたデータは、投稿雑誌による査読を受けて論文発表できるように推進していく。また卵巣癌細胞株(明細胞癌、漿液性癌)においてHDAC6が蛋白・mRNAレベルで高発現している細胞株を特定する。その細胞株において、HDAC6のノックアウトもしくはノックダウン実験、HDAC6選択的阻害剤の投与実験を行い、HDAC6が卵巣明細胞癌に与える影響の評価、関連する上下流因子の特定を行う。
今回検討に用いた数種の明細胞癌細胞株において、遺伝子変異等の違いからsilibininの効果には差があり、つまり、細胞死に至らせるsilibinin濃度は、癌の特性に影響されると考えられた。これに即した用法・容量を検討する必要がある。さらにin vivoにおいて明細胞癌に効果を示すsilibinin濃度による副作用等、現行の化学療法との併用について検討を行いたいと考えている。また、HIF-1は生体内の様々な細胞や組織で役割を担っているため、このバランスを崩さないよう、silibininを癌治療に応用するためには、適切なドラッグデリバリーシステムの構築を確立することが必要と考えられる。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症によって、予定していた国際学会のキャンセル、本研究に費やすことのできる時間の減少、物品納入の遅延などが発生した。研究自体はおおむね順調に進行しているが、国内外の学会で研究成果を発表し、他の研究者とのディスカッションを行うことによって、研究のさらなる推進力としたい。
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Research Products
(4 results)