2019 Fiscal Year Research-status Report
大腸癌における新たな静脈侵襲判定基準の確立を目指す分子病理学的研究
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18K06999
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
深澤 由里 東邦大学, 医学部, 講師 (90392331)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤澤 千恵 東邦大学, 医学部, 講師 (10393000)
三上 哲夫 東邦大学, 医学部, 教授 (90286352)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 大腸癌 / 静脈侵襲 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度選出した50症例の大腸癌症例を用いて、文献的に腫瘍の脈管内侵入に重要な分子として報告されていたRHO-Cに対する抗体を購入し免疫組織化学的染色を施行した。腫瘍の一部に発現が観察されたが、非癌部そして癌部の中でも転移陽性例と転移陰性例に明確な発現分布の差が見られず、発現の意義を考察することが困難であった。その他にも腫瘍の浸潤転移に重要な分子として報告がある数種の抗体を購入し免疫組織化学的染色の条件検討を行ったが、有意な結果を得られなかった。 癌細胞の細胞-細胞間接着の低下が脈管内侵入のきっかけになると考え、培養細胞を用いた実験を行った。大腸癌培養細胞株(DLD-1およびWiDr)に対して、DLD-1は腸内に存在する酪酸、WiDrはサイトカインの一種であるTNF-alphaを添加し、一定時間後の細胞-細胞間接着因子の変化をタンパクレベルおよびmRNAレベルで検討した。DLD-1は酪酸を添加することで形態学的に細胞-細胞間接着が減弱し、コントロールに比べて遊走能が有意に増加することを確認した。加えて細胞-細胞間接着分子としてCD44に注目したがmRNAの発現は酪酸添加後に有意な低下をみとめた。一方、WiDrはTNF-alphaの添加により形態学的に細胞-細胞間接着の減弱はみとめたが、CD44のmRNAの発現低下は見られなかった。しかしDLD-1では確認されなかったELISA法による培養液へCD44の分泌が確認された。以上よりDLD-1およびWiDrは各添加によりCD44の低下がみられるが、低下するメカニズムは異なっており、今後これら癌細胞の細胞-細胞間結合の低下が癌細胞の脈管内侵入にどう関与するのか検討していく予定である。加えて内皮細胞における細胞-細胞間接着に関与することも考えられ、内皮細胞との関係について実験を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
他の研究が遅延しエフォートが低下してしまったこと、抗体を複数購入したが思うような免疫組織化学染色の条件が見いだせなかったことが最も大きい原因として考えられる。また培養細胞を用いた新たな実験を開始し、慣れていない試薬や機器を使うことが増え、その条件検討などに想定以上に時間がかかってしまった。さらに年度末は新型コロナウイルスの影響で実験を進められない時期ができてしまったことが考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究分担者との連携を強めることで、新たな機器の使用なども円滑に行えるように心がける。今年度、さまざまな実験手法の条件がある程度整ったため、次年度はそれを利用し応用することで実験を円滑に進められると考える。 新型コロナウイルスの影響もあり、一年延長することを検討する。
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Causes of Carryover |
純粋に実験できる時間が減少したことにより支出が減ってしまった。また計画では、免疫組織化学染色による症例の検証により注目すべきタンパクを絞り込み、そのタンパク発現分布を中心として解析を広げる予定であったが、明確なものを絞り込めなかったため実験が進まなかった。よって、次年度も引き続き免疫組織化学染色で使用する抗体の購入に充てるが、免疫組織化学的な解析だけでなく、培養細胞実験で得た結果を含めた新たなタンパクの変化と形態的な所見から分子機構を理解し、その結果を免疫組織化学染色に還元するようにする。
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