2018 Fiscal Year Research-status Report
口腔上皮腫瘍性病変早期診断のための画像工学的解析手法を用いた細胞診判定基準の確立
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18K07000
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
久山 佳代 日本大学, 松戸歯学部, 教授 (00234526)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
末光 正昌 日本大学, 松戸歯学部, 助教 (10708770)
齋藤 美雪 (森川美雪) 日本大学, 松戸歯学部, 助教 (90246926) [Withdrawn]
山本 泰 日本大学, 松戸歯学部, 講師 (80459586)
田口 千恵子 日本大学, 松戸歯学部, 助手(専任扱) (80434091)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 口腔細胞診 / 深層型異型細胞 / 表層型異型細胞 / 輝度 / 細胞形態学的計測 / 口腔がん検診 |
Outline of Annual Research Achievements |
口腔癌のスクリーニング検査として行われた口腔粘膜擦過細胞診では,採取された細胞の異型の有無を判断することが最も重要である。口腔粘膜擦過細胞診では,採取される細胞のその大部分が表層型扁平上皮細胞である。しかし,細胞診ガイドライン消化器2015年度版(臨床細胞学会,金原出版)における診断のフローチャート には,判定のキーポイントが深層型扁平上皮細胞であると記されている。しかし,細胞の判別基準等の明確な判定基準がしめされておらず,深層型扁平上皮細胞の異型判別については,病理医にゆだねられている。本研究の目的は,口腔細胞診において深層型扁平上皮細胞について,画像解析の手法を用いて細胞診判定別に比較検討を行い,細胞像の特徴を明文化することである。日本大学松戸歯学部付属病院にて擦過細胞診を行った症例のうち,舌縁部からのみ検体の採取がなされた384症例を対象とした。対象のPapanicolaou染色スライドガラス標本を1名の細胞診専門歯科医がOLYMPUS社UPlanSApoシリーズの対物レンズを装着した正立明視野顕微鏡BX51にて対物レンズ10倍以上で観察した。症例内の細胞と比較してN/C比が高く,細胞質がライトグリーンに濃染する粘膜上皮細胞を,対物レンズ40倍の状態で,前記顕微鏡にCマウントカメラアダプタ0.63Xにて接続された顕微鏡用デジタルカメラDP74を用いてcellSens Standard(オリンパス)で細胞像の撮影を行った。形態学的解析では,陰性と陽性の面積については大きい開きがみられた。顕微鏡的に正常なものと腫瘍性のものを見比べた場合,腫瘍性細胞の核が大きく,数値によって裏付けが取れたが,N/C比については大きな隔たりはなかった。これは,細胞自体の大きさも腫瘍性のものでは大きくなっており,その結果としてN/C比に大きな違いが生じなかったものと推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的は、細胞異型の計測および細胞質輝度の測定に基づく細胞判定基準の明文化である。本研究を推進するうえで最新式顕微鏡用デジタルカメラおよび画像解析ソフトウェアの導入が必要であった。画像解析を可能とする機器およびソフトウェアの選定のために、実際にモデル機器を使用するなど時間を要した。最終的に既存のオリンパスBX51に接続可能な顕微鏡用デジタルカメラ(DP74)とオリンパス付属ソフトウエア(cellSens Standard)が最適と判断した時期が秋であり、その結果、細胞画像解析の開始が遅れた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では,フローチャートの最初の分岐点である深層型異型細胞に着目し、扁平上皮癌の好発部位である舌縁部の細胞のみを対象としている。口腔粘膜には様々なバリエーションがあるため,場所や粘膜による差異が存在する可能性を考慮して,今後は別の部位に関しても検討を行っていく必要がある。また,疑陽性の症例は44症例あったが,扁平上皮細胞が出現していた症例はうち1症例のみであった。従って,本研究結果から,疑陽性症例における扁平上皮細胞の一般的な所見を述べることはできない。疑陽性症例における深層型扁平上皮細胞についても明らかにすることが望まれる。深層型異型細胞の明文化を2019年度中に完成させる。 さらに口腔上皮性腫瘍(浸潤癌も含む)は表層分化が特徴であるため、表層型異型細胞に対する画像解析が必要である。表層分化型異型細胞は、核異型に加えて細胞質の輝度の変化により病理医が主観的に評価してきた。他領域(子宮頸部など)と比較し、口腔上皮腫瘍性病変の核異型の変化は乏しく、細胞質の色の所見が非常に重要である。そこで、輝度の解析では,24bitフルカラー画像を用いて,核と細胞質それぞれの平均の輝度値を明らかにし,輝度分布のヒストグラムから歪度と尖度を求める予定である。
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Causes of Carryover |
次年度繰越金が生じた原因は、顕微鏡用デジタルカメラ(DP74)、cellSens Standardを含む諸費用が、計画時よりも値引きされた価格で購入されたためである。本研究計画は、平成31年度(2019年度)から共同研究者の退職により計画時よりも1名減少したことにより、その労力を液状検体自動標本作製装置で補うべく変更した。標本作製自動化に伴ない必要となる消耗品(標本作製用フィルター、細胞固定用バイアル、専用スライドガラス)の購入に充てる。
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Research Products
(9 results)