2020 Fiscal Year Research-status Report
がん型アミノ酸トランスポーターLAT1を標的とした胆道癌治療効果と発癌経路の解明
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18K07001
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
柳澤 信之 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 准教授 (80337914)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | LAT1 / アミノ酸トランスポーター / 胆道癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
L-type amino acid transporter 1(LAT1、SLC7A5)はがん特異的に発現していることから、がん型アミノ酸トランスポーターと考えられ、がんの診断のみならず予後バイオマーカーあるいは治療標的分子として注目されてきている。我々は胆管癌・膵癌において正常上皮よりもLAT1が発現亢進し、その高発現は独立した 有意な予後不良因子であることを報告した(Yanagisawa N. et al., Cancer Med., 2014ほか)。そこでLAT1高発現で新規阻害薬JPH203での効果が期待され、かつ悪性度の高い胆道癌細胞株について、LAT1機能解析・新規LAT1選択的阻害薬JPH203に対する腫瘍抑制効果の検討を行い、LAT1阻害薬によるがん治療効果等、臨床応用のための基礎的データを収集することを目的としている。 今回、ヒト胆道癌細胞株(HuCCT1・TFK1・HuH28・G415)を使用し、各細胞株において、1)各々の 細胞増殖能を検討した。2)ホルマリン固定パラフィン包埋cell block切片を用いた免疫染色、3)Real time RT-PCR、4)western blottingでLAT1・LAT2の発現を確認した。これらの結果からTFK1がLAT1の細胞膜高発現・良好な細胞増殖能を示したためTFK1を選択し、5)siRNAによるLAT1のknock down実験を行った。各種細胞株における6)LAT1阻害薬JPH203とゲムシタビンの細胞増殖抑制効果について検討した。siRNAによってwestern blottingで一時的なタンパク発現低下を確認した。ゲムシタビンは想定通りの細胞増殖抑制を示し、またJPH203もゲムシタビンと比較して弱いが細胞増殖抑制を認めた。shRNAを使用したstableなLAT1抑制細胞を現在作製中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
ヒト胆道癌細胞株(HuCCT1・TFK1・HuH28・G415)各細胞株の1)増殖曲線を作製し比較した。LAT1・LAT2の発現量については2)ホルマリン固定パラフィン包埋cell block切片を用いた免疫染色、3)東洋紡SuprePrepⅡ/KOD SYBR Setを用いて逆転写 によるcDNAを合成後、Real time PCR(ロシュ社LightCycler 480Ⅱ)、4)Cell lysateのwestern blottingを行った。これらの結果からTFK1がLAT1の細胞膜高発現が認められ、かつ細胞増殖能も高くRNAi実験に使用することとした。5)siRNAによるLAT1のknock down実験を行い、western blottingでタンパク発現低下を確認した。6)ゲムシタビン・抗LAT1阻害薬JPH203による細胞増殖抑制を検討した。この際、ゲムシタビンは想定通りの薬効が確認された。一方JPH203は原薬で特に高濃度試薬調整時の析出・薬効低下が問題となったが、製剤が入手可能となり薬物実験系を再検討中である。またshRNA系のLAT1発現抑制が想定よりも芳しくなく、現在検討中である。加えてコロナ禍での実験停止期間もあり全体として進捗は遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の予定として、各細胞株のLAT1・LAT2発現量を再確認後、knockdown・overexpression目的に解析する細胞株を選択する。knockdown法についてはゲノム編集法も選択肢には挙げるが、現時点では実績のあるshRNA法で検討する予定である。LAT1をstableにoverexpressionした細胞株とknock downした細胞株を各々作製し、ヌードマウス皮下に作製した細胞株を移植し腫瘍を形成させ、LAT1発現量による腫瘍増殖速度、組織像への影響について解析する。さらにマウスに抗LAT1阻害剤単独あるいは他の既存の抗がん剤との併用投与を行い、腫瘍径の変化を比較する。また胆道手術材料を用いて前癌病変Bil-INを加えて免疫組織化学的にLAT1・LAT2及びLAT3発現局在の解析を進める予定である。
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Causes of Carryover |
研究責任者の勤務する病院において年度初めに大規模な新型コロナウイルス院内クラスター感染が発生したため、責任者の在宅勤務・研究施設への出入り禁止による実験停止期間が約3ヶ月あり研究計画が遅滞した。次年度には計画していた実験を行えることを想定し、主に動物実験を遂行することで交付金を使用する予定である。
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