2019 Fiscal Year Research-status Report
Is sphingolipid of the cell membrane involved in invasion and metastasis of non-adenocarcinoma of the lung?
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18K07002
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
上田 善道 金沢医科大学, 医学部, 教授 (50271375)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 肺扁平上皮癌 / 細胞膜スフィンゴ脂質 / 上皮間葉移行 / sphingosin kinase 1 / 肺実質肺胞腔内進展 |
Outline of Annual Research Achievements |
肺癌は本邦における癌死の首座を占める臨床上最重要疾患であり,今後も増加が予想されている。肺腺癌では抗癌剤の改良に加え,ドライバー変異による活性化チロシンキナーゼに対する分子標的治療が導入され,生命予後の延長が得られている。一方,肺扁平上皮癌に対する分子標的治療の開発は停滞しており,浸潤・転移に関わる分子機構の解明とそれに基づいた新規治療法の開発は現代医療の重要課題の一つである。がんの生物学的事象の多くは細胞膜で生じている。今回,細胞膜活性脂質sphingolipidの新規機能に着目した肺扁平上皮癌の浸潤・転移制御法の確立を目標に令和1年度において以下の研究成果を得た:1.平成30年度の肺扁平上皮癌における sphingosine kinase (SK) 1の western blot法での発現亢進の確認、扁平上皮癌浸潤性発育部での高発現と epithelial mesenchymal transition (EMT)マーカー発現を、多数症例での解析で検証した。2.最近注目されている末梢型肺扁平上皮癌における腫瘤辺縁部での肺実質肺胞腔(気腔)内進展 spread through air spaces (ATAS)部では有意に SK1の発現低下と EMT分子の発現低下を明らかにした。3. 扁平上皮癌多数症例での検討でも、SK1の発現と Ki67標識を指標にした増殖活性との有意な相関は認めなかった。4.生命予後を含めた臨床病理学的因子との解析では有意差は得られなかった。5.扁平上皮癌における S1P receptor (S1PR)1~5の発現解析のための条件設定を行い、現在多数症例に応用している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
肺扁平上皮癌外科摘出標本における western blot法ならびに免疫染色法による sphigosin kinase (SK) 1とその5種類の特異的レセプター発現の定量的解析は順調に進んでいるが、肺小細胞癌の外科切除例が少なく、小細胞癌における解析が進んでいない。また、ヒト扁平上皮癌細胞株を用いた SK1遺伝子修飾による in vitroにおける研究は、共同研究を行って来た元金沢医科大学の岡崎教授の定年に伴う他施設への異動もあり、実験条件の設定段階に留まり、未だ有意な研究成績の獲得には至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
1.SK1の肺扁平上皮癌における S1P receptor (S1PR1~5)の定量解析と EMT関連分子ならびに生命予後を含めた臨床病理学的因子との関連を検討する。2.令和2年度の研究成績からは SK1と肺扁平上皮癌患者の生命予後との有意な関連が得られないことも危惧され、我々のグループが報告した頭頚部原発扁平上皮癌における他施設(関東逓信病院)での大型コホートでの扁平上皮癌進展における SK1の役割の検証と浸潤関連分子ならびに stem cell marker発現との関係の研究を計画し、既に着手している。3.肺小細胞癌に関しては、前向き研究ではなくアーカイブ標本を用いた検討を行う。4.ヒト扁平上皮細胞株を用いたヒト肺扁平上皮癌細胞株を含む培養腫瘍細胞を用いたSMS-1,-2, SK1遺伝子の発現・機能修飾による,転移関連分子群の細胞膜上での再分配,セカンドシグナルの活性化・集積,ERM活性化,lamellipodia形成への影響と sphingolipidの浸潤・転移能への関与の研究を、金沢医科大学総合医学研究所の石垣教授、谷口講師の協力を得て進展させる。
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