2019 Fiscal Year Research-status Report
腫瘍微小免疫抑制環境下におけるI型IFN誘導『責任分子』の探索と免疫療法への応用
Project/Area Number |
18K07009
|
Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
小坂 朱 旭川医科大学, 医学部, 助教 (40561030)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 免疫抑制 / I型インターフェロン / アゴニスト |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、免疫抑制状態におけるSTINGおよびTLRアゴニストによるI型インターフェロン(IFN)誘導機序の解明とその機構に関わる『責任分子』を同定するとともに、この『責任分子』の機能調節による免疫賦活能の増強とそれを応用したがん免疫療法を開発することである。 「先進ゲノム支援(先進ゲノム解析研究推進プラットフォーム)」により担がんマウスの腫瘍組織から回収したTAM(tumor-associated macrophages: 腫瘍関連マクロファージ)をSTINGおよび各種TLRアゴニストで刺激をした際のトランスクリプトーム解析を行い、その遺伝子発現情報を用いて遺伝子機能解析を行った。TLR4刺激による遺伝子発現パターンはSTINGおよびその他のTLRアゴニスト刺激と比べて大きく異なっていたが、TLR4によるIFN-betaの遺伝子発現はSTINGアゴニストと同様の高い誘導能を有していた。また、STINGアゴニストは各種TLRアゴニストと比べてIFN-alphaの発現誘導能が高いことが示された。一方、TLR3刺激では他のアゴニスト刺激と比べてDNAセンサーおよびTLRシグナル経路系の遺伝子発現増加が少なく、マウス骨髄から誘導したTAMモデル細胞を用いた検討と同様にIFN-beta 発現誘導が低かった。そこで、マウス骨髄から誘導したコントロールマクロファージおよび免疫抑制性マクロファージ(TAMモデル細胞)を用いてSTINGおよび各種TLRアゴニストによるI型IFN誘導能を検討したところ、TLR3に加えてTLR7やTLR9アゴニストにおいても定常状態に比べ免疫抑制環境下ではI型IFN誘導能が低下する可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
トランスクリプトーム解析結果を用いた遺伝子発現情報解析に多くの時間がかかったことにより、免疫抑制状態におけるI型IFN誘導に関与する『責任分子』がまだ同定できていないため。
|
Strategy for Future Research Activity |
どのような因子がTLRアゴニストのI型IFN誘導機能低下に関与しているのか、TAMモデル細胞を用いてIL-6やIL-13などの抑制性サイトカインを中心とした検討を行う。エンリッチメント解析などの遺伝子機能解析結果も考慮しながら検討を行い、免疫抑制環境下におけるI型IFN誘導に関与する『責任分子』の同定およびそのメカニズムを解析する。同定した『責任分子』の機能に基づいて、担がんマウスモデルを用いた『責任分子』の機能調節による抗腫瘍免疫効果、もしくはヒトがん組織における『責任分子』の発現量と生存率や再発率などの臨床データとの相互関係を検討し、I型IFN誘導アゴニストによる治療効果の予測バイオマーカーの同定やコンパニオン診断法の開発につなげる。
|