2018 Fiscal Year Research-status Report
EBV関連胃癌をモデルとした胃癌細胞と免疫・炎症細胞との相互作用の解明
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18K07012
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
阿部 浩幸 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 講師 (40708632)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | EBV / 胃癌 / 腫瘍免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
EBV胃癌を含む胃癌の腫瘍免疫について、主に以下の2点を解析した。 1)EBV関連胃癌43例において、腫瘍細胞あたりのウイルスコピー数を、手術検体(FFPE標本)から抽出したDNAと、病理標本の画像解析を用いて測定した腫瘍細胞比率を用いて測定し、臨床病理学的意義を検討した。その結果、ウイルスコピー数が高い群は予後不良であり、PD-L1陽性率も高いことが示された。細胞内の高ウイルス量が腫瘍細胞のPD-L1発現に寄与している可能性が示唆された。なお本研究と関連し、EBV関連胃癌で変異頻度が高いとされるARID1Aについて免疫組織学的に調べたところ、ARID1A発現陰性例(遺伝子変異のある症例)は発現保持例(遺伝子変異の無い症例)と比べウイルスコピー数が高いことも判明した。 2)T細胞活性化を抑制する作用を持つ分子IDO1に着目し、胃癌276例を集めたtissue microarrayを用いて免疫染色を行った。その結果、IDO1低発現が170例、中等度発現が61例、高発現が45例認められた。低発現、高発現の症例に比べ、中等度発現の症例は腫瘍径が小さく、早期胃癌が多く、予後が良好であることが判明した。分子生物学的サブタイプ別の解析ではEBV関連胃癌が中等度陽性症例が多い傾向を示したのに対し、EBV胃癌と同様にリンパ球浸潤が比較的多いとされるミスマッチ修復タンパク陰性の胃癌(MSI胃癌)では、IDO1の発現が低い傾向を示し、必ずしも腫瘍内炎症細胞浸潤の多いサブタイプにIDO1発現が強いわけではないことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
EBV関連胃癌において、腫瘍細胞あたりウイルスコピー数という今まであまり注目されてこなかった指標が、PD-L1の発現と関係していることを見出すことができた。また新たな腫瘍免疫制御分子としてIDO1に着目し、その臨床病理学的意義を明らかにすることができた。 一方、胃癌、特にEBV関連胃癌におけるPD-L1発現の制御機構の検討、及び免疫関連遺伝子多型の検討はまだ進んでおらず、平成31年度以降の重要な課題と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
EBV関連胃癌ではウイルスコピー数がPD-L1発現とともに、ARID1A発現の有無とも相関を示すことから、ARID1AとPD-L1の間には何らかの関係があるものと示唆された。今後、ARID1A変異、発現消失がPD-L1の発現に与える影響に関して、検討を進めていく予定である。 EBV関連胃癌やそのほかの胃癌におけるPD-L1発現制御機構について検討を進める。特にEBV感染の有無、及びEBVコピー数の多寡が、どのような細胞内の内因性経路を介しPD-L1発現の変化を起こしていくのか、解析したい。 胃癌におけるIDO1発現については腫瘍内浸潤リンパ球の多寡やPD-L1発現との間に関連があるかどうか、更に検討を進める方針である。
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Causes of Carryover |
本年度、試薬を必要とする実験が当初見込みより少なかったため、次年度使用額が生じた。次年度は試薬の使用量が増加する見込みである。また海外出張を伴う学会発表等を計画しており、旅費の使用額も増す見込みである。
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Research Products
(6 results)