2019 Fiscal Year Research-status Report
EBV関連胃癌をモデルとした胃癌細胞と免疫・炎症細胞との相互作用の解明
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18K07012
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
阿部 浩幸 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 講師 (40708632)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 胃癌 / PD-L1 / EBV / 炎症細胞 / 免疫組織化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は主に以下の研究を行った。 1) EBV関連胃癌では高度なリンパ球浸潤があることが分かっており、免疫チェックポイント治療の良い適応となることも報告されているが、これらの知見のほとんどは原発巣を対象としたものであり、他臓器への転移巣における腫瘍免疫の状態はよく分かっていない。そこで我々はEBV関連胃癌の病理解剖症例(希少な症例である)2例を対象に、転移巣と原発巣で免疫組織学的検討を行い腫瘍免疫の状態を比較した。単位面積当たりのCD8陽性細胞数は原発巣と肝転移巣とでは差が無かったが、腹膜播種では少なくなる傾向が見られた。症例数が少ないため、今後はより症例数を増やす(外科切除された転移巣も解析する)ことで一定の傾向が見られるか否か、検討を進めていきたい。 2) 胃癌の予後不良なサブタイプの一つとして神経内分泌癌がある。神経内分泌癌に対する免疫チェックポイント治療の可能性を探るため、胃原発神経内分泌癌25症例(腺癌との混在例を含む)についてPD-L1免疫染色を行い、combined positive score (CPS: PD-L1陽性の腫瘍細胞・炎症細胞数の合計を、腫瘍細胞数で割り、100を掛けたもの)を算出した。結果、18例(72%)においてCPSが1を越え、免疫チェックポイント治療の対象となり得ることが示唆された。CPSの低い症例ではリンパ節転移やリンパ管侵襲の頻度が有意に高く、(有意差が無いものの)予後不良となる傾向があることも示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
病理検体の組織学的解析は順調に進めているが、当初計画にあったエクソソームによるPD-L1への発現影響や、患者遺伝子背景とEBV関連胃癌の易罹患性の検討は進んでいない。2020年度の主要な課題と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
剖検症例の検討についてはEBV関連胃癌だけだと症例数が限られるため、ミスマッチ修復タンパク欠損胃癌(MSI胃癌)にも対象を広げ、またCD8以外のマーカーについても検討を行う。患者の遺伝的背景とEBV関連胃癌の関係についても解析を進める。 また近年、クロマチンリモデリング因子ARID1Aの発現消失がPD-L1発現亢進に寄与するという報告もみられる。ARID1AはEBV関連胃癌において高率に遺伝子変異、発現消失が認められる癌腫であることも知られているため、ARID1AとPD-L1の関連についても検討を進めたいと考えている。
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Causes of Carryover |
本年度、試薬を必要とする実験が当初見込みより少なかったため、次年度使用額が生じた。次年度は試薬の使用量が増加し、また論文投稿に伴う費用も発生する見込みである。
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Research Products
(1 results)