2018 Fiscal Year Research-status Report
炎症性腸疾患関連癌の高悪性度に関わる炎症バイオマーカーOLFM4の役割の解明
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18K07026
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
吉田 功 北里大学, 医学部, 准教授 (90316943)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 炎症性腸疾患 / 潰瘍性大腸炎 / クローン病 / 発癌 / 悪性度 / OLFM4 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者のこれまでの研究成果により、olfactomedin 4(OLFM4)が炎症性腸疾患の炎症活動性に相関するバイオマーカーであることが明らかとなり、潰瘍性大腸炎(UC)とクローン病(CD)で共通した発現上昇が認められるが、その発現誘導はNF-kB/p65及びAP-1(Jun/Fos)と異なる機構を介することがわかった。OLFM4は糖蛋白質でfrizzled7と結合することによりWNT/β-cateninを抑制する可能性が示唆された。OLFM4は孤発性大腸癌での高発現しており、炎症性腸疾患(IBD)関連腫瘍では炎症巣に比して発現低下が見られる。孤発性大腸癌におけるOLFM4発現とβ-catenin核内移行は逆相関しており、腫瘍先進部ではOLMF4発現と腫瘍簇出も逆相関を示していた。OLFM4発現低下がIBD関連腫瘍における上皮間葉連関(EMT) の亢進との関連が考えられた。上皮性腫瘍におけるEMTの亢進は悪性度と相関が知られていることから、IBD関連腫瘍において、炎症巣におけるOLFM4発現が腫瘍化に従って低下することは、IBD関連腫瘍の悪性度と因果関係が考えられた。 IBD関連腫瘍の先進部においてOLFM4発現を検索し、各種のEMT関連分子動態と比較した。その結果、孤発性大腸癌の先進部ではOLFM4発現とEMT関連分子の亢進(β-catenin核内移行・E-cadherin発現低下・slug発現)が逆相関するのに対して、IBD関連腫瘍の腫瘍先進部ではOLFM4発現低下とβ-catenin核内移行及びE-cadherin発現低下が相関するのに対して、slug発現を全く認めることができなかった。また、腫瘍簇出動態も孤発性大腸癌との差異を認めた。これらはIBD関連腫瘍におけるEMTでは孤発性大腸癌と異なるメカニズムが生じている可能性を示唆しており、次年度以降の解析に続ける。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は研究計画に基づき、UC及びCDにおいて炎症活動性に相関するOLFM4発現に一致したβ-catenin, マーカー群の抑制とStemnessとの関係の探索を行った。 1.Matts’ histological score(Matts, QJM, 1961)に加えてBressenot, et al. Gut 2015, Mosli, et al. Gut 2017に基づいたUCの炎症活動性評価を行った。 2.昨年度までの研究課題の成果に伴う発展として、炎症性腸疾患(IBD)関連腫瘍の腫瘍先進部におけるOLFM4及び上皮間葉連関(EMT)マーカーの免疫組織化学的検索を先行させ、IBD関連腫瘍では通常型孤発性大腸癌とは異なるEMT分子機序の可能性を見出した。 進捗としては、当初の研究計画と前後する部分があるが、最終的なエンドポイントへ達成できる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度行う予定であった、IBD関連腫瘍のFFPE検体からの分子病理学的検索を、2018年度に新たに行った腫瘍先進部における免疫組織化学的検索の成果を踏まえて、腫瘍中心部と腫瘍先進部に分けて行うことにより、iBD関連腫瘍の分子病理学的特性を明らかにしていく。 その成果に基づき、潰瘍性大腸炎関連癌細胞株を用いて、分子細胞生物学的にその特性を証明し、次年度以降の蛋白質レベル及びin vivoレベルでの解析に繋げる予定である。
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Causes of Carryover |
前年度までの研究成果に基づき、2018年度は分子病理学的検索よりも免疫組織化学的検索を先行させたため、消耗品などの使用が少額となった。 2019年度は2018年度の成果に基づき分子病理学的検索を進めるため、使用額は2018年度・2019年度をあわせると予定額に達する見込みである。
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Research Products
(5 results)