2019 Fiscal Year Research-status Report
コットンラット:複数疾患を具有する実験用齧歯目のヒト併存症モデルへの応用
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18K07037
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中村 鉄平 北海道大学, 獣医学研究院, 客員研究員 (80786773)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
昆 泰寛 北海道大学, 獣医学研究院, 教授 (10178402)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | コットンラット / 併存症 / 慢性腎臓病 / 下咽頭梨状窩瘻 / 皮膚 / 性ホルモン / 自己免疫疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢化社会は「複数疾患を併発する(併存症)」患者を増加させた。ヒトの併存症を再現する実験動物は、その原因究明や治療法開発に極めて有用である。本研究では、ヒト病原体に感受性を持ち複数疾患を発症する実験用齧歯目、コットンラットがヒト併存症を模倣する可能性に着目し、下記2点を明らかにすることを目的とした。①解剖学的、組織学的及び血液学的特徴を網羅的に解析することで、コットンラットが具有する疾患の相互作用,増悪因子を同定する。②分子形態学的及び遺伝学的手法を用いて併存症の根幹をなす原因遺伝子を同定する。 2018年度は、近交系雌雄コットンラットの全身諸臓器について肉眼的,組織学的及び血液学的に精査した。その結果、コットンラットはインスリン抵抗性等の代謝性疾患、慢性腎臓病を発症することを報告してきた。 2019年度は、第一に加齢雄性コットンラットが呈する糸球体病変を主徴とする慢性腎臓病を精査した。第二にコットンラットの下咽頭梨状窩瘻の組織学的及び免疫組織化学的な加齢性変化を精査し、その診断マーカーの候補を見出した。最後に、コットンラットが具有する脆弱な尾の組織学的解析及びその原因を精査した。 以上のように、本年度はコットンラットの表現型をより詳細に明らかにすることで、ヒトの疾患モデルとしての有用性が深まった。、コットンラットの表現型には自己免疫疾患及び性ホルモンの影響が疑われる。それらが各疾患へ与える役割を証明するための解析が進行中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度はこれまで明らかにしたコットンラットの表現型をより詳細に明らかにするとともに、新たな表現型解析を並行して実施した。当該年度で腎臓のトランスクリプトーム解析を実施予定であったが、代わりに尾の皮膚の脆弱性について精査し、ヒトの皮膚疾患モデルとしての可能性を見出した。 これらの表現型に免疫異常及び性差が認められることから、その解析が進行中である。前者に関しては、胸腺の形態異常を見出している。後者に関しては、性ホルモン受容体の免疫組織化学により異常な発現を見出しており、これらの解析が進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は下記の事項を解析する。 ①コットンラットの免疫異常に関する表現型、多臓器疾患への寄与を精査する。 ②コットンラットの表現型の性差の原因、特に性ホルモン受容体について解析する。 ③腎臓にターゲットを絞り、トランスクリプトーム解析を行うことで発現遺伝子種を同定し慢性腎臓病の候補遺伝子を検索する。
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