2018 Fiscal Year Research-status Report
CBP/p300依存性EGFRシグナリングを利用した皮膚恒常性維持制御法の開発
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18K07039
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
市瀬 多恵子 琉球大学, 医学部, 委託非常勤講師 (00396863)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
市瀬 広武 琉球大学, 医学部, 准教授 (10313090)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | CBP/p300 / 皮膚 / ケラチノサイト |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、CBP/p300依存性EGFRシグナリングを利用した皮膚恒常性維持制御法の開発を目的としている。 Rafキナーゼ経路のみを活性化することができるH-Rasエフェクター変異体(T35S)を表皮ケラチノサイト特異的に過剰発現する遺伝子導入マウス(CGHT35S;K14Creマウス)は生育可能だが、表皮ケラチノサイトの分化抑制傾向と細胞増殖亢進を特徴とした異常を呈する。一方、表皮ケラチノサイト特異的Ep300;CrebbpコンディショナルKOマウスの場合、Ep300あるいはCrebbpの機能的アリルを1コピー有していれば生育可能であり、CBP/p300発現の減少だけでは表皮の外見上の異常は引き起こされない。しかし、CBP/p300の発現量減少は、CGHT35S;K14Cre の異常をより顕著にするのみならず、皮膚乳頭腫様病変の形成を促進した。分子レベルでは、CBP/p300の発現量減少により、Mig6の発現量減少、EGFRのリン酸化レベルの亢進、Ras-Raf1-Mek1/2-Erk1/2シグナリングの亢進が引き起こされていることを明らかにした。これらの結果から、表皮ケラチノサイトにおいて、CBP/p300にはMig6の発現量を維持することでEGFR-Ras-Erkシグナリングの活性化を負に制御する作用があることがわかった。これらの成果を論文にまとめた。 EGFRは上皮性腫瘍の癌化に深く寄与しており、EGFRを標的としたキナーゼ活性の抑制による治療法が開発されている。しかし、EGFRは上皮組織の恒常性維持やバリア機能にも寄与しており、EGFRのキナーゼ活性の抑制は重篤な副作用を引き起こす。CBP/p300依存性のアセチル化レベルをHDACインヒビターを用いて変化させることで、EGFRシグナリングを遮断することなく皮膚扁平上皮癌を抑えることが可能かもしれない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度より所属大学が変更となったため、遺伝子組換え生物の第二種利用に関わる申請、動物愛護管理に基づく動物実験計画の申請を新たに行う必要があり、実験開始時期が当初の予定より遅れてしまった。しかし、細胞を用いた分子レベルでの解析を進め、論文の投稿準備を進めることができたので、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
CBP/p300の発現量減少により、Mig6の発現量減少、EGFRのリン酸化レベルの亢進、Ras-Raf1-Mek1/2-Erk1/2シグナリングの亢進が引き起こされたが、CBP/p300の酵素活性を抑制するCBP/p300インヒビター、あるいはCBP/p300依存性のアセチル化修飾を亢進する効果を有するヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)インヒビターの存在下でマウス表皮ケラチノサイトを培養した場合にも、EGFRシグナリング促進もしくは抑制効果があるかを検討する。培養系で効果が見られた場合、in vivoにおいても、その効果を検討する。
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Causes of Carryover |
平成30年度より所属大学が変更となったため、遺伝子組換え生物の第二種利用に関わる申請、動物愛護管理に基づく動物実験計画の申請を新たに行う必要があり、実験開始時期が当初の予定より遅れてしまった。そのため、消耗品費として支出することを予定していた、マウス代・飼育費、細胞培養用試薬・抗体などの購入費が一部未使用となってしまった。現在は、全ての申請が終了しており、当該年度予定していた実験を次年度行う予定である。また、本研究内容に関する論文が査読中であり、掲載決定後での掲載料が必要である。
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Research Products
(2 results)