2020 Fiscal Year Research-status Report
CBP/p300依存性EGFRシグナリングを利用した皮膚恒常性維持制御法の開発
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18K07039
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
市瀬 多恵子 琉球大学, 病院, ポスドク研究員 (00396863)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
市瀬 広武 琉球大学, 医学部, 准教授 (10313090)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | CBP/p300 / 皮膚 / ケラチノサイト |
Outline of Annual Research Achievements |
EGFRは上皮性腫瘍の癌化に深く寄与しており、EGFRを標的としたキナーゼ活性の抑制による治療法が開発されている。しかし、EGFRは上皮組織の恒常性維持やバリア機能にも寄与しており、EGFRのキナーゼ活性の抑制は重篤な副作用を引き起こす。 本研究では、CBP/p300依存性のアセチル化レベルを、インヒビターやアクチベーターを用いて変化させることで、EGFRシグナリングを遮断することなく、EGFRシグナリングの強度を人為的かつ適切に制御する方法について検討する。本研究の発展により、皮膚の恒常性を維持する方法、さらに、皮膚扁平上皮癌を抑制する方法の確立を目指している。 2020年度では、マウスで得た知見がヒトにも適用できることを検証するために、ヒトケラチノサイトを用いた実験系の確立に努めた。培養を容易にするため、また遺伝子操作や薬剤処理後のクローン化を可能にするため、ヒト不死化ケラチノサイトを作製した。独自に作出したヒト不死化ケラチノサイトは、サイトケラチン遺伝子(Krt5、Krt14)、p63遺伝子、カドヘリン遺伝子(pCad、 eCad)などを高発現しており、正常細胞の性質をよく保持していた。また、カルシウム添加による分化誘導を行ったところ、基底細胞層で発現する、Krt5、Krt14遺伝子の発現減少、および、有棘細胞層や顆粒細胞層で発現する、Krt1、Krt10、involucrin、loricrin遺伝子の発現上昇が見られ、分化刺激に対しても正常細胞同様の遺伝子発現の変動が見られた。 このヒト不死化ケラチノサイトを用いて、CRISPR/Cas9システムを用いたゲノム編集による、CBP、p300遺伝子の破壊を行い、それぞれの発現が消失したヒトケラチノサイトの作製に成功した。また、特殊素材を用いた、真皮・表皮からなる全層皮膚の3次元培養系の確立を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、テレワークの要請や、学内共同利用実験施設の利用停止措置などにより、実験を一時的に中断する必要が生じた。しかし、ヒト皮膚の恒常性を維持する方法やヒト皮膚の扁平上皮癌を抑制する方法の検討に不可欠である、ヒトケラチノサイトを用いた実験系が確立できたので、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒトケラチノサイトおよびヒト線維芽細胞を用いた3次元培養系は、コラーゲンゲルを用いた既存の方法が存在するが、コラーゲンゲルのロットや線維芽細胞の継代数により、全層皮膚構築の成否に影響が生じることがあった。また、air-liquid interface培養開始後の培養可能期間が最長でも2週間と限られており、より長期間の安定した培養方法を確立することが重要であると考えられた。 今後は、ヒトの生体により近い環境で、長期間観察できるよう、ヒトケラチノサイトおよびヒト線維芽細胞による、特殊素材を用いた、真皮・表皮からなる全層皮膚の3次元培養系の確立を行う。この3次元培養系を用いて、各種インヒビターが、表皮・真皮に与える効果を検討したい。また、CRISPR/Cas9システムを用いたゲノム編集により、CBP、p300遺伝子を破壊したヒトケラチノサイトを用いることで、インヒビターの効果の特異性を検討したい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、テレワークの要請や、学内共同利用実験施設の利用停止措置などにより、実験を一時的に中断する必要が生じた。そのため、マウス、細胞培養用試薬・抗体、プラスチック製消耗品などの購入費が一部未使用となった。現在、ヒトケラチノサイトおよびヒト線維芽細胞による、特殊素材を用いた、真皮・表皮からなる全層皮膚の3次元培養系の確立を行っており、そのための培地、試薬、プラスチック製消耗品などを購入する費用が必要である。また、論文投稿の準備も進めているため、論文の英文校正や投稿にかかる費用も必要である。
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Research Products
(1 results)