2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K07050
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
石亀 晴道 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 研究員 (70729227)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 末梢神経 / 腸管神経 / Trk |
Outline of Annual Research Achievements |
神経栄養因子の受容体Tropomyosin receptor kinase(Trk)ファミリーであるTrkA、TrkB、TrkCを介したシグナルは、神経系の発生に必須であり、その発現様式の違いは神経細胞の分化や機能に影響を与えると考えられている。しかしながら、腸管におけるTrkファミリー発現神経の組織内分布や免疫恒常性維持機構における役割に関しては、ほとんど報告がない。そこで本研究は、Trkファミリーに注目し、異なるTrk受容体を発現する神経の性質を解析することにより、新たな腸管の恒常性維持機構を解明することを目的とした。レポーターマウスを用いたTrkファミリー遺伝子発現神経の組織内分布について解析したところ、TrkAを発現する神経線維は、その神経細胞体は腸管内には存在せず、主に交感神経節より投射される神経であると考えられた。TrkB発現神経は、腸管では筋層間神経叢にその細胞体が分布し、腸管外末梢神経では主に求心性迷走神経に発現していた。一方で、腸管でのTrkC発現神経は、筋層間神経叢と粘膜下神経叢との両方に存在する内在神経であり、粘膜組織でもその神経線維が高密度に分布していることが分かった。さらに、神経レポーターマウスを用いて様々な神経節より神経細胞を分離し、RNAシークエンスにより遺伝子発現解析を行ったところ、TrkAは腹腔交感神経、TrkBは心性迷走神経、TrkCは腸管粘膜下神経において、それぞれ最も強く発現しており、形態学的解析と同様な結果が得られた。以上の結果から、異なるTrkファミリー遺伝子を発現する腸管神経は、それぞれ特徴的な組織内分布を示すことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、神経レポーターマウスを用いることにより、異なる神経節より神経細胞体を分離する手法を確立し、RNAシークエンスによる遺伝子発現解析を行った。その結果、交感神経節、迷走神経下神経節、脊髄後根神経節、腸管粘膜下神経節でのTrkファミリーの遺伝子発現レベルの解析や、それぞれの神経節に特異的に発現している遺伝子の抽出を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、現在導入中である遺伝学的手法を用いて、Trkファミリー遺伝子が発現する神経の機能を選択的に操作できる実験系を確立する。また、より詳細な遺伝子発現解析を行うことにより、Trkファミリー遺伝子が発現する神経の主要な感覚受容器関連遺伝子や神経ペプチドを抽出する。これら候補遺伝子の神経特異的欠損マウスや、Trkファミリー発現神経の機能を特異的に操作可能なマウスを作製し、表現型解析を行うことで、末梢神経を介した腸管恒常性維持における役割を解析していく予定である。
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Causes of Carryover |
本年度までに、主に実験手技や材料が確立された形態学的手法や、予備的な遺伝子発現解析を終了した。次年度は、より詳細な遺伝子発現解析や、遺伝子改変マウスの表現型解析に用いる試薬の購入に予算を使用する予定である。
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