2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K07054
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
相内 章 国立感染症研究所, 感染病理部, 主任研究官 (10572133)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | HTLV-1 / ワクチン / 母子免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
HTLV-1は、Adult T-cell leukemia(ATL)等のHTLV-1関連疾患を引き起こす。ATLの発症は1年あたりキャリア1000~3000人に1人の割合で起こり、生涯発症率は約4~5%と考えられている。HTLV-1キャリアにおける発症予防ならびに新たな感染を阻止するための手段として、ワクチン接種が考えられる。Envタンパク質に対する抗体がウイルスを中和するという報告から、Envタンパク質を抗原としたワクチンの接種により、感染防御が可能であると期待できる。HTLV-1の感染防御を評価する最適な動物実験モデルは存在しないが、マウスにHTLV-1感染ヒトT細胞であるMT-2細胞を移入することで、逆転写されたウイルスゲノムがマウスゲノムに組み込まれプロウイルス化するとの報告がある。ウイルス複製は起こらないとされるため、ワクチン接種によりこのプロウイルス化を阻止できれば、ワクチンにより感染防御能を獲得できたと評価可能であると考えた。 昨年度は、生後2週の仔マウスを用いてすでに所有するMT-2細胞による感染を行った際の感染率を評価したが、26匹中4匹のみでプロウイルスを検出するに止まった。今年度は、感染率の高いとされるMT-2細胞を入手し改めて感染率を評価した。この結果、18匹中14匹でプロウイルス化を認め、新しく入手したMT-2細胞を使用することで、ワクチンの評価が可能であると考えられた。 また、バキュロウイルス発現系による組換えEnvタンパク質(rEnv)を抗原とし、メスのBALB/cマウスにアジュバントと共に3週間隔で2回皮下接種し、さらにrEnvのみの追加ワクチン接種を行ったのちに交配を行った。出産・誕生後に母及び仔マウスから経時的に得た血清中のIgG抗体価を測定したところ、仔マウス血清は母マウス血清と比べてrEnv特異的抗体価が高いことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
HTLV-1感染ヒトT細胞であるMT-2細胞には幾つかのクローンが存在し、すでに所有していたMT-2細胞は感染効率の低いクローンであることが明らかになった。感染効率の高いMT-2細胞クローンの入手と評価に時間を要したため遅れを生じたが、新しいMT-2細胞クローンの感染率を評価することができた。このことは、今後の実験で得られる結果を正しく評価する上で重要な知見になるため、遅延を生じたが実験の精度向上に結びつくと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題では、母子免疫を利用した感染防御効果の検討を第一目標としている。全身性のIgG抗体応答を主体とするワクチンの皮下接種、粘膜局所へのIgA抗体応答を可能にするワクチンの経鼻接種、どちらの方法が母子免疫を利用したHTLV-1感染阻止に対して効果が高いか比較する予定である。しかしながら、接種容量の上限が大きい皮下接種と異なり、経鼻接種でマウスの鼻腔にワクチンを滴下することから、その接種容量は少ない。これを可能にするためには、濃い濃度でrEnvを調製する必要がある。今後、精製度を減ずることなく濃い濃度のrEnvを精製・調製することが課題となる。
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Causes of Carryover |
(理由)年度末納品等にかかる支払いが令和2年度4月1日以降となったため、当該支出分については次年度の実支出額に計上予定である。令和1年度分についてはほぼ使用済みである。 (使用計画)上記通り。
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