2019 Fiscal Year Research-status Report
非アルコール性脂肪性肝炎の発症・進展における、胆汁酸、短鎖脂肪酸の役割の解明
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18K07069
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
常山 幸一 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 教授 (10293341)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | NASH / 動物モデル / 肝細胞癌 / 胆汁酸 / 短鎖脂肪酸 / 質量分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は以下の検討を行った。まず雄のC57BL/6 Jマウスにグルタミン酸ナトリウムを皮下投与して、メタボリックシンドローム(MS)-非アルコール性脂肪肝炎(NASH)モデルを作成した。このモデルでは肝組織中でfatty acid synthaseやglycerol-3-phosphate acyltransferaseが増加し、中性脂肪の産生が高まっており、内臓脂肪ではcrown-like structureが見られ、ヒトNASH患者に類似する所見を呈した。このマウスにフラクトオリゴ糖(FOS)を投与したところ、肝組織像の改善、内臓脂肪の炎症の改善とM1マクロファージ比率の減少、糞便中のn-酪酸、プロピオン酸、酢酸の増加、血清中のプロピオン酸の増加が誘導された。FOSは腸内環境を改善して短鎖脂肪酸を増加させ、MSやNASHの病態を改善すると考えられた(BMC Gastroenterol.)。次に、胆汁酸がNASHの病態にどのように関与しているかを、Sprague-Dawleyラットに種々の用量のコール酸を添加した高脂肪・高コレステロール食を投与して検討した。その結果、コール酸を適切な量添加した群では経時的にNASHが増悪し、線維化が進展することがわかった(Pathol Res Pract. )。また、AJマウスに特別な餌を投与して作成したNASHー線維化モデルの肝臓に脂質を貪食したマクロファージが異常集積していることを見出し、貪食脂質成分をイメージング質量分析で解析した。その結果m/z 772.5が候補物質として同定され、MS/MS解析によってホスファチジルコリン(P-18:1(11Z)/18:0)あるいはホスファチジルエタノールアミン(18:0/20:2(11Z,14Z))などのリン脂質の異常蓄積が同定された(2020年病理学会総会発表予定)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は非アルコール性脂肪肝炎の発症・進展における胆汁酸、短鎖脂肪酸の役割の解明を目的としている。2019年度の研究では、モデル動物を用いて一次胆汁酸の過剰がNASHの病態を用量依存的に増悪させることを明らかにした。また、ヒト型胆汁酸を産生する特殊なマウスを用いて、2オクチン酸の腹腔内投与による原発性胆汁性胆管炎(PBC)モデルマウスを作成すると、C67BL6マウスで作成したPBCモデルマウスよりも強い線維化を惹起することを明らかにした(論文作成中)。従来よりマウスの肝疾患では線維化が起こりにくいことが知られていたが、その原因としてマウス特有の胆汁酸の肝庇護作用が指摘されている。ヒト型胆汁酸マウスは胆汁酸研究に最適なモデルと考えられ、現在、ヒト型胆汁酸マウスにコール酸を添加高脂肪・高コレステロール食を投与したNASHモデルを作成中であり、2020年度の解析に用いる予定である。また、食成分(オリゴ糖)の投与によって腸内細菌叢を安定化すると、短鎖脂肪酸量が便中でも血清中でも増加し、内臓脂肪の炎症や肝臓の脂質代謝、及び肝組織像が改善することを明らかにした。この事は短鎖脂肪酸の量や種類がNASHの病態形成に密接に関与していることを示しており、腸への介入がNASHの予防や治療の標的として最重要であることを示している。現在、短鎖脂肪酸の作用点を解明するために、免疫染色とmRNA解析で短鎖脂肪酸の受容体の発現を検討中である。2019年度はNASHの病態と強く関連すると推測される脂質(病的脂質)の同定にも成功した。現在、NASH肝臓に蓄積している脂質成分をラマン散乱光分析によって非侵襲的に観察する手法の確立にも取り組んでいる。2020年度は本研究の集大成として、短鎖脂肪酸、胆汁酸、病的脂質のそれぞれの動態を検討するため、腸内細菌に対する治療介入実験を計画している。
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Strategy for Future Research Activity |
一次胆汁酸の過剰がどのような機序で肝障害を惹起するのかを、ヒト型胆汁酸モデルマウスを用いた解析で明らかにする。さらに、肝発がんとの関連性を検討するために、ヒト型胆汁酸モデル動物にコール酸添加高脂肪・高コレステロール食を長期間投与する群を別途作成し、発がんとの連関を検討する。我々は最近、生後3日以内の新生児期の4CSマウスにstreptozotocinを皮下投与することで、薬剤性肝発癌モデルを作成することに成功した(論文投稿中)。このマウスを経時的にsacrificeし、腫瘍部、腫瘍周辺部、背景肝のそれぞれの部位で胆汁酸組成がどのように変化していくかを検討する。この検討はイメージング質量分析とラマン顕微鏡で実施する予定である。短鎖脂肪酸とNASH病態との関連性は2019年度までの解析で概ね明らかとなったが、短鎖脂肪酸の作用機序については未だ不明な点が多い。短鎖脂肪酸の受容体の発現部位や発現量を半定量的に評価する方法を開発するとともに、2020年度に新たに作成するヒト型胆汁酸マウスを用いたNASHモデルで、短鎖脂肪酸と胆汁酸、さらに新たに見いだされた病的脂質との連関についても検討を加える予定である。また、もっとも腸内環境の改善効果が高い物質を見出すことも重要な課題である。2019年度にフラクトオリゴ糖、乳菓オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖をそれぞれ同量NASHモデル(TSODマウス)に投与したところ、オリゴ糖の種類によって産生される短鎖脂肪酸の比率や病態改善効果が異なっていることがわかった(論文作成中)。本研究を発展させ、NASH病態を効果的に改善するオリゴ糖を同定するとともに、その作用機序を短鎖脂肪酸、胆汁酸、蓄積脂質の観点から多角的に検討する予定である。
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[Journal Article] The challenges of primary biliary cholangitis: What is new and what needs to be done2019
Author(s)
Terziroli Beretta-Piccoli B, Mieli-Vergani G, Vergani D, Vierling JM, Adams D, Alpini G, Banales JM, Beuers U, Bowlus C, Carbone M, Chazouill O, et al.
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Journal Title
Journal of Autoimmunity
Volume: 105
Pages: 102328~102328
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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