2020 Fiscal Year Research-status Report
新規モデルマウスを用いたシェーグレン症候群発症機構の解明
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18K07075
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
田中 ゆり子 東邦大学, 医学部, 講師 (40396685)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小野里 磨優 東邦大学, 薬学部, 講師 (50610094)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | シェーグレン症候群 / 病原性T細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで我々は、T細胞の染色体構造調節因子Special AT-rich sequence binding protein 1(SATB1)遺伝子を血球系細胞特異的に欠損させたマウス (SATB1cKO)を用いて、自己免疫疾患発症機序の解析を行ってきた。SATB1cKOマウスは、生後4週齢からヒトのシェーグレン症候群(Sjogren's syndrome : SS) 様病態を呈することが明らかになっている。本研究では、SATB1cKOマウスをモデルマウスに用いて、SS発症初期の病態形成とそれに関わる分子メカニズムを明らかにすることを目指した。 昨年度に引き続きSATB1cKOマウスにおいて、血清中自己抗体価が上昇する前段階(SS発症初期)でのSS特異的な新規バイオマーカーを探索した。SS発症前後のSATB1cKOマウス唾液腺、涙腺組織での炎症性サイトカインmRNAを測定したところ、血清中と同様にIFN-γ、IL-6が増加した。しかし血清中の結果とは異なりIFN-γ mRNAはSS発症初期から有意な増加が認められた。昨年度の結果より、SS発症初期のSATB1cKOマウス血清では、トリプトファン(Trp)の代謝体であるキヌレニン(KYN)濃度が野生型マウスと比べて有意に増加していた。さらにTrpをKYNに代謝するインドールアミン2,3デオキシゲナーゼ(IDO) mRNAは、SS発症初期のSATB1cKOマウス唾液腺、涙腺組織で既に発現が認められた。次にIFN-γとIDOのmRNA発現上昇の関係を調べるために、SATB1cKOマウスへ抗IFN-γ抗体を投与した。その結果、唾液腺組織でのIDO mRNA発現は有意に低下した。これらの結果から、IDO発現がSATB1cKOマウスSS発症初期の新規バイオマーカー候補となる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度の緊急事態宣言発令に伴い、動物実験に遅れが生じた。現在は到達目標の一つである、自己抗原の同定に向けて実験を行なっている。SATB1cKOマウス頸部リンパ節T細胞をRAG2ノックアウトマウスに移入し、その中に含まれる自己反応性(病原性)T細胞を濃縮する系が確立できた。濃縮された病原性T細胞をマウス胸腺腫細胞株BW5147と融合し、数種類のT細胞ハイブリドーマを作成した。現在その反応性を確認している。また、SATB1cKOマウス頸部リンパ節T細胞をB6ヌードマウスに移入すると、SS特異的な自己抗体産生が認められた。この血清中には新規自己抗原を認識する抗体が含まれる可能性があるので、SATB1cKOマウス唾液線、または涙腺抽出物と免疫沈降を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
自己反応性T細胞クローン化については、これまでに引続き実験を継続する。新規自己抗原の探索については、新規自己抗原を認識する抗体が含まれている可能性が高い血清を用いて、SATB1cKOマウス唾液線、または涙腺抽出物との免疫沈降で得られたサンプルを質量分析計(LC-MS/MS)により解析する。得られる新規自己抗原候補は、病原性T細胞ハイブリドーマや自己反応性T細胞クローンとの反応系で検証する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス緊急事態宣言に伴う飼育制限、移動制限により動物の繁殖と実験が遅れた。また学会開催なども中止となり、参加する学会も少なくなった。次年度は、計画通りの動物実験と学会参加、論文投稿を行う予定である。
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