2019 Fiscal Year Research-status Report
細胞間相互作用を介した肝再生機構の解明と再生肝細胞の起源の同定
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18K07079
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
鈴木 亨 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 上級研究員 (50334280)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 肝再生 / 肝臓機能 / 細胞外膜成分 / RNA |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までの成果として、肝臓が形成される初期の段階でmRNA分解機構を抑制する遺伝子改変を施したマウスでは、肝機能の成熟が遅延し、肝炎・肝細胞壊死等の症状を示すことを観察していた。生後4週から8週にかけて肝臓は最も重篤な症状を示すが、マウスは生存し続ける。そして生後12週以降のマウス肝臓の組織像は正常に近いものに戻ることまで分かっていた。肝細胞と非肝細胞を区別する蛍光標識をして細胞の分布を調べたところ、生後4週の肝臓は殆どが肝細胞の蛍光標識を発現する細胞で占められていた。生後8週から16週になると非肝細胞由来の蛍光物質を発現する細胞が数多く肝実質に観察された。その細胞群は肝細胞に特異的なタンパク質を発現していることを免疫染色を用いて確認した。従って、非肝細胞から肝細胞の機能を持つ細胞(新生肝細胞と記述する)が生み出され、ほぼ正常な肝臓の構造・機能を獲得したことが可能性が考えられたので、今後さらに深く追求していく。 生後8週の遺伝子改変マウスの肝臓から、標識した蛍光を利用してフローサイトメトリーによる肝細胞、新生肝細胞の分取を実施した。それぞれの細胞の遺伝子型を複数の検体で確認すると、肝細胞は大部分が遺伝子改変型、新生肝細胞は大部分が野生型という結果になった。しかし存在比に違いはあるが、どちらの標識細胞も遺伝子改変型と野生型の混在になっていることが分かった。今後、分取する週齢や分離の精度を上げて検討する必要がある。 並行して、成熟した肝臓の形成後にmRNA分解機構を抑制する遺伝子改変を施したマウスの検討も行った。肝細胞の特徴を示す遺伝子発現様式の消失と致死性肝炎の発症を検出した。抑制の条件を軽減させて肝再生が起こる状況を探索している。一方、脂肪組織でのmRNA分解機構の欠損は脂肪機能が悪化の一途をたどることが分かり、症状回復は肝臓に特徴的に観察される現象であることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度までの検討により、フローサイトメトリーによる肝細胞、新生肝細胞の分取をある程度実施できるようになってきたが、抽出したRNAは分解産物が目立ち、RNAシークエンスが実施できるような質ではなかった。また、マウス個体によっては細胞を分取する作業中に新生肝細胞の標識を持つ細胞群の割合が大きく減少し、充分な数の細胞の獲得に困難があった。作業時間を短縮させる工夫が必要となり、新規導入のマウス系統との交配を開始したことに一つの要因がある。 細胞外膜小胞(EV)の調製、特にエクソソームは遠心分離法、市販キットの使用のどちらも安定的に分取できることを測定により確認した。しかしいずれの手法でもRNAの量が充分でないという問題があった。mRNA分解機構に異常がある遺伝子改変は、肝機能異常のために体が小さいという性質があり、血清・血漿の収量自体が多くないことも影響していた。 また、掲載まで到達した学術論文(本研究と関連のあるもの、業績欄に記載)の執筆、校正作業に想定よりも時間を要したことの理由のひとつである。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、肝細胞と新生肝細胞を2つの異なる蛍光で標識するという手法を用いていた。並行して肝細胞のみを蛍光標識するマウス系統を使用し、肝実質内の非標識細胞を新生肝細胞として扱う。作業が簡便になり、細胞の傷害の程度が軽減するので、目的に適合する質と量のRNAが得られる期待がある。既に必要なマウス系統を入手し、交配を開始しているので、マウスが用意でき次第実施する。標識を1つにすることで、フローサイトメトリーだけでなく、磁気ビーズによる目的の細胞の単離が可能になる。磁気ビーズの使用は細胞傷害をさらに軽減するので、単離のための条件検討を行い、より良好な検体をRNAシークエンス解析へと進める。一方で、新生肝細胞の由来候補として胆管上皮細胞が考えられるので、胆管上皮由来の細胞を標識したマウスモデルも利用し、mRNA分解機構を抑制した時の挙動を追跡して、肝実質にあらわれるかどうかを確認する。 これまで遺伝子改変以外の肝障害モデルで同様の現象を観察できていないが、肝障害を誘導する期間や、与える肝障害の性質に検討する余地があると考えられる。これまでは総胆管反応を誘導する薬剤を試していたが、中心静脈に影響する薬剤の投与を試すとともに、 これまでよりも長期間の投与を実施する。 エクソソームからのRNA調製が、主に量を確保する点で難航しているので、いずれの遺伝子型についても、複数個体の血清から調製したエクソソームをプールしてRNA抽出に用いるようにする。そのためこれまでよりも多めの個体を用意している。
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Causes of Carryover |
細胞の分取、RNA調製で円滑に進まない点があり、実験内容の修正(マウスレポーターの変更など)や実施できていない実験(RNA解析)があることによる。 また、参加した学会の一つが近距離移動のみを必要とする開催地であったため、宿泊費の不要になり、旅費の負担が減少したことも関係している。 本年度は、当初の計画にある実験を実施するとともに、円滑に進まない点を打開すべく考案した実験も行うことで次年度使用額、及び本年度請求分を使用する計画である。
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[Journal Article] The CCR4-NOT complex maintains liver homeostasis through mRNA deadenylation2020
Author(s)
Takahashi A, Suzuki T, Soeda S, Takaoka S, Kobori S, Yamaguchi T, Mohamed H, Yanagiya A, Abe T, Shigeta M, Furuta Y, Kuba K, and Yamamoto T.
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Journal Title
Life Science Alliance
Volume: 3
Pages: 未定
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Essential functions of the CNOT7/8 catalytic subunits of the CCR4-NOT complex in mRNA regulation and cell viability2020
Author(s)
Mostafa D, Takahashi A, Yanagiya A, Yamaguchi T, Abe T, Kureha T, Kuba K, Kanegae Y, Furuta Y, Yamamoto T, Suzuki T.
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Journal Title
RNA Biology
Volume: 17
Pages: 403-416
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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