2018 Fiscal Year Research-status Report
メラノコルチン1型受容体機能低下の膵臓発がんへの関与
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18K07081
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
高橋 真美 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, ユニット長 (90214973)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 膵臓がん / メラノコルチン受容体 / SNPs / 細胞株 / マウスモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
メラノコルチン受容体(MCR)のうち、MC4Rは摂食抑制やエネルギー代謝、MC1Rは色素合成や抗炎症・免疫に関与しており、全体として肥満や生体防御異常に関わっている。本研究では、MC1Rの機能低下と膵発がんとの関わりを明らかにすることを目的としている。H30年度は、以下について検討を行った。 日本人膵がん患者の摘出腫瘍の病理標本の残余組織よりDNAを抽出し、PCR法によりMC1R遺伝子を増幅して、ダイレクトシークエンス解析によりSNPs/点突然変異の有無を調べた。ホルマリン固定標本から抽出したDNAでは長いPCR産物を得ることが難しく、一部のSNPsの解析は可能だが、MC1R遺伝子全長のSNPs/点突然変異を調べることは困難であった。そこで、数例の膵がん症例の凍結手術検体を用いてMC1RのSNPs/点突然変異の有無を解析した結果、欧米人由来の膵がん細胞株とは異なるタイプのSNPsが検出された。しかしながら、検出されたSNPsは元々日本人に多いタイプであったので、膵がんで多いかどうかはさらに多くの症例を解析して健常人との比較を行う必要がある。また、その機能解析が重要である。そのために、日本人膵がん症例の手術検体やゼノグラフト組織から培養細胞株を数株樹立した。 マウス膵臓発がんモデルにおいて発生した腫瘍から研究代表者が樹立済みの野生型Mc1rの膵臓がん細胞株を、Mc1r変異を有するMc1r<e/e>マウスとその野生型マウスの皮下に移植し、宿主側のMc1r機能低下が腫瘍の増殖や炎症細胞の浸潤等に及ぼす影響を予備的に調べた。その結果、どの宿主でも移植腫瘍は順調に増殖し、野生型Mc1rの膵臓がん細胞株の増殖に対する、宿主のMc1r変異の有無の明らかな影響は認められなかった。膵臓への同所移植モデルにおいて浸潤への影響を調べるなどさらなる検討が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
膵がん症例のホルマリン固定標本からのDNA解析があまりうまくいかず、多くの症例の解析ができなかった。また、膵がん組織は間質が多く、がん細胞の割合が少ないため、遺伝子変異の検出も難しい。そこで、解析対象を膵がん培養細胞株とし、日本人の膵がん患者の腫瘍組織、もしくは手術検体を免疫不全マウスに移植して得られるゼノグラフトから初代培養を行っているが、その樹立に時間がかかっており、機能解析が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
膵がん患者の腫瘍組織、もしくは手術検体を免疫不全マウスに移植して得られるゼノグラフトから初代培養を行い、さらに多くの細胞株を樹立してMC1RのSNPs/点突然変異の有無と発現レベルのパネルを作成し、欧米人由来の既存膵がん細胞株との遺伝子発現パターンや細胞形態・増殖性・浸潤能等の性状比較を行う。また、野生型MC1Rを有するヒト正常膵管由来細胞株や膵がん細胞株に変異型MC1R遺伝子を導入して高発現させ、その機能解析を行う。さらに、免疫不全マウスに移植して増殖への影響を調べる。 マウス膵臓がん細胞の同種移植モデルにおいては、膵臓への同所移植をした場合の腫瘍の増殖・浸潤・転移についてさらに検討を行う。また、MC1R機能低下型変異を有するマウスを膵発がんモデルマウスと交配し、MC1R機能低下が発がんや浸潤・転移に及ぼす影響を明らかにする。Mc1r変異を有するマウス膵臓腫瘍からがん細胞株を樹立し、野生型マウスに移植して、野生型Mc1rの膵がん細胞株の増殖形態との比較を行う。
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Causes of Carryover |
(理由) 膵がん症例のホルマリン固定標本からのDNA解析があまりうまくいかず、多くの症例の解析ができなかった。また、日本人膵がん症例由来の培養細胞株の樹立に時間がかかり、機能解析が遅れているため、予定より支出が少なかった。 (使用計画) 日本人の膵がん症例由来の培養細胞株を多数自家樹立もしくは連携研究者より入手して当該受容体遺伝子配列を解析するため、費用がかかる。また、当該受容体のSNPsを有するヒトがん細胞の移植モデルや当該受容体変異マウスを用いて腫瘍増殖や発がんへの影響を検討する動物実験にかなりの費用が必要となることから、これらの研究計画の完遂のために繰り越し分を充てる計画である。
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Research Products
(3 results)