2018 Fiscal Year Research-status Report
南米型トリパノソーマ感染による宿主アポトーシスおよびオートファジー抑制機構の解析
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18K07083
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
嶋田 淳子 群馬大学, 大学院保健学研究科, 教授 (20211964)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | Trypanosoma cruzi / オートファジー / LC3 / c-FLIP |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでにTrypanosoma cruzi感染細胞では宿主オートファジー経路が抑制されることを明らかにした。オートファジーは、まず隔離膜が伸長し、閉環してオートファゴソームとなり、さらにリソソームと融合してオートリソソームが形成され不要物が分解される。原虫感染細胞では、オートリソソーム形成が抑制されることがわかっているため、その前段階のオートファゴソーム形成について解析した。オートファゴソーム形成にはLC3と呼ばれるタンパク質がAtg4により修飾されLC3-Ⅰとなり、Atg7、Atg3を介し、最終的にホスファチジルエタノールアミン(PE)が結合してLC3-Ⅱとなることが重要である。この反応経路の中で、アポトーシス抑制因子c-FLIPがAtg3とLC3の結合を抑制することが報告されていることから、T. cruzi感染細胞におけるLC3-Ⅱ形成について検討した。まず、LC3のN末端にGFPタグを付加したGFP-LC3細胞を樹立した。GFP-LC3細胞にT. cruziを感染させ、経時的に細胞を回収し、抗GFP抗体を用いてpull downアッセイを行った。感染細胞および非感染細胞で、LC-3と共にAtg3がpull downされたが、Atg7は検出できなかった。その理由としては、Atg7はLC3-Ⅰに結合するとすぐにAtg3に置換してするためと考えられた。T. cruzi感染9時間後まででは、c-FLIPはLC3-Ⅰとpull downされなかった。これまでの結果で、感染細胞におけるc-FLIPタンパク質の上昇は感染2日、3日後で順次増加することがわかっている。そのため、感染後のさらに培養しc-FLIPがLC3-Ⅰに結合するかどうか検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Trypanosoma cruzi感染細胞では宿主オートファジー経路が抑制されることがわかっている。オートファジーはmTORが活性化されその下流へとシグナルが伝わるカノニカル経路と、エンドサイトーシスなどにより病原体を取り囲んだ膜を介する経路がある。原虫感染によりmTOR、オートファジー経路の上流が活性化されているかどうか調べる目的でAtg13のリン酸化について調べたところ、感染細胞でAtg13リン酸化抗体に反応するバンドがみられ、本経路はカノニカル経路であると推察された。 オートファゴソーム形成にはLC3と呼ばれるタンパク質がAtg4により修飾されLC3-Ⅰとなり、Atg7、Atg3を介し、最終的にホスファチジルエタノールアミン(PE)が結合してLC3-Ⅱとなることが重要である。この反応経路の中で、アポトーシス抑制因子c-FLIPがAtg3とLC3の結合を抑制することが報告されていることから、T. cruzi感染細胞におけるLC3-Ⅱ形成について検討した。まず、LC3のN末端にGFPタグを付加したGFP-LC3細胞を樹立した。GFP-LC3細胞にT. cruziを感染させ、経時的に細胞を回収し、抗GFP抗体を用いてpull downアッセイを行った。感染細胞および非感染細胞で、LC-3と共にAtg3がpull downされたが、Atg7は検出できなかった。その理由としては、Atg7はLC3-Ⅰに結合するとすぐにAtg3に置換してするためと考えられた。T. cruzi感染9時間後まででは、c-FLIPはLC3-Ⅰとpull downされなかった。これまでの結果で、感染細胞におけるc-FLIPタンパク質の上昇は感染2日、3日後で順次増加することがわかっているため、この時点でのLC-3とc-FLIPの相互作用を調べる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
Trypanosoma cruzi原虫自身にもオートファジーの機構が備わっており、オートファジー関連タンパク質が見つかっている。その中でTcAtg8.1およびTcAtg8.2はLC3とホモロジーがあり、原虫の形態変化に機能していると考えられている。また、TcAtg3はAtg3のホモグとして知られており、本タンパク質が感染細胞内で宿主オートファジー経路に影響を及ぼす可能性があるか検討する。そこで、原虫のTcAtg8.1、TcAtg8.2およびTcAtg3をKOした原虫作製を行う。ゲノム編集技術CRSP/CAS9を用いて、これらの遺伝子をKOした際の表現系、形態変化への影響、宿主への感染について調べる。すでにTcAtg8.1とTcAtg8.2については、CRSP/CAS9に必要なgRNAを作製しており、原虫へのトランスフェションの条件検討を行っている。 原虫感染によるc-FLIPタンパク質は感染3日後で高くなるため、その時期に抗GFP抗体を用いてpull downアッセイを行う。c-FLIPの関与が認められない場合には、宿主オートファゴソーム形成が正常に進行しているかを確認する。具体的にはウエスタンブロット法によりLC3-ⅠからLC3-Ⅱの変換を調べる。また、アポトーシス阻害剤を添加したときに、原虫感染細胞のオートファジーが抑制されるかを観察するとともに、逆にアポトーシスを誘導したときの変化についても調べる。
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Research Products
(2 results)