2018 Fiscal Year Research-status Report
赤痢アメーバ含硫脂質代謝に不可欠な輸送体群の同定と機能解析
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18K07087
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
見市 文香 (三田村文香) 佐賀大学, 医学部, 講師(特定) (70576818)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 含硫脂質 / 輸送体 |
Outline of Annual Research Achievements |
赤痢アメーバは、ヒトの大腸に感染しアメーバ赤痢症を引き起こす原虫である。臨床薬が少なく、病原性の解明、新規薬剤開発が危急の課題である。これまで申請者は、赤痢アメーバの含硫脂質代謝に着目し研究を進めている。硫酸代謝は、生物界に普遍的に存在する重要な代謝経路である。しかし、赤痢アメーバの硫酸代謝は、ヒトを含む多くの生物とは大きく異なり、含硫脂質代謝に特化している。我々は、最終代謝産物の1つコレステロール硫酸がシスト形成に必須な分子であること、さらに近年、他の最終代謝産物として、新規含硫脂質fatty alcohol disulfatesを同定し、この分子が栄養体期の原虫生存に必須であることも見出した。つまり赤痢アメーバの含硫脂質代謝は、生活環を通じて重要な代謝経路である。しかしながら、それぞれの基質、ならびに中間体の輸送については、未解明な点が多い。本研究では、含硫脂質代謝に必須な基質および代謝産物の輸送を担う輸送体群に着目、それらの同定および特徴を明確化することを目的として研究を開始した。 最初に輸送体候補について、赤痢アメーバの全ゲノムデーターベース探索を行い、他生物との系統関係の解析などを通して、有用な輸送体候補28個を取得した。そして、28個の候補遺伝子について、遺伝子の発現抑制株の作製を行った。確立した株についてその性質を解析した結果、顕著な増殖阻害を示す株を7株が得られた。つまり、7種類の輸送体候補は、赤痢アメーバの増殖に重要な輸送体であることが示唆された。現在これらの細胞株における含硫脂質代謝との関連性についての解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
輸送体候補について、赤痢アメーバの全ゲノムデーターベース探索を行い、他生物との系統関係の解析などを通して、有用な輸送体候補28個を取得出来た。そして、これら28個の候補遺伝子について、遺伝子の発現抑制株の作製を行った。これらの遺伝子は多重遺伝子であったため、単一遺伝子についての遺伝子発現抑制株では表現型が出ないことを危惧したが、7つの遺伝子については顕著な細胞増殖阻害という表現型を示すことが明らかになった。一方で、多重遺伝子のため、互いに相補したと考えられる組み合わせもあった。今後はこれらについて、我々が確立した“複数遺伝子を同時に発現抑制する手法”を用いて解析することを開始している。以上の事から当初の計画通りおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
[計画1] 各種輸送体の同定のためのスクリーニング 作製した28種類の遺伝子発現抑制株を用いて、含硫脂質の代謝・蓄積について放射ラベルされた硫酸を用いて解析する。そして、含硫脂質の蓄積、もしくは減少が見られた株を選択、それらの株で発現抑制されている遺伝子について詳細な解析を行う。単一遺伝子の遺伝子発現抑制株では、含硫脂質代謝に変化が見られなかった場合は、多重遺伝子のため互いに機能相補した可能性を考え、複数遺伝子を同時に発現抑制する株を作製、その表現型の解析を行う。⇒含硫脂質代謝と機能的にリンクする輸送体候補分子を得る [計画2] 候補分子の生化学・分子細胞生物学的解析 [計画3] 輸送体候補について、組換え蛋白質を用いた生化学的な証明 ⇒硫酸、脂質、含硫脂質の輸送体の同定 [計画4] SL-II、SL-III、SL-IVの同定
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Causes of Carryover |
(理由) 予定していた物品の購入が次年度になったこと、参加予定の学会が次年度開催になったことにより次年度使用額が生じた。 (使用計画) 同位体や培養器具などの購入、および学会参加のための旅費として使用を予定している。
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